俄かに兜町を騒がせ、国際問題化したオリンパス㈱の経理偽装工作事件に頭を痛めている。実は長男が問題のオリンパスに勤務している。今年入社20年目になり、先日の「文化の日」には、私の誕生祝として夕食をご馳走してくれたばかりで、その時はまだ会社側は企業買収に投資した巨額の資金は、適正と主張していた。会社のコメントを信じていた、内視鏡販売部門の1セールスマンに過ぎない息子には、まさか会社がこのような不正行為を行っていようなどとは思いもよらなかっただろう。それが一転して一昨日高山修一・新社長が1990年代に財テクで損失を出し、その穴埋めのために、当時の社長らごく一部の役員が「飛ばし」という経理上の偽装工作を行っていたことを告白した。これにより事態は大きく変わった。
外から見て、オリンパスほどの世界的優良企業が、なぜ財テク失敗による穴埋めを法律を犯してまで処理しなければならなかったのか理解に苦しむ。いかに法律を犯して穴埋めしてもいずれ明らかになるのは分りきったことである。それが、1990年代の初めから長きに亘って行われていたとは、常識的にはとても考えられない。会社ぐるみの悪質な事件と受け取られ、日本国内のみならずアメリカではFBIが捜査に乗り出すとも言われ、最初に不正を内部告発し、解任されたイギリス人社長ウッドフォード氏の母国イギリスでは、メディアが大々的に取り上げウッドフォード氏の主張を擁護している。これでオリンパスの立場は一層苦しくなった。
それにしても20年近くに亘ってよくもこのような偽装工作が暴露されなかったものだと驚く。前会長・前社長の菊川剛氏、前副社長・森久志氏、常勤監査役・山田秀雄氏らが首謀者であり、隠蔽者であると槍玉に上げられたが、彼ら以外に経理担当者らが知らない筈がないし、監査法人は何を調べていたんだと言いたい。
それが、今日になって損失の隠蔽、つまり企業買収に投じた買収額が高すぎると指摘した監査法人がその直後の2009年に解約され、新しい監査法人に変更されていたことが新聞で明らかにされた。新たにオリンパスの決算書を監査した新監査法人「新日本監査法人」が、不正をどう取り扱ったのかは報じられていない。この不祥事に伴い、オリンパスの株価は急落し、連日ストップ安を続けて最高値時に比べて1/8程度にまで下がり、今日東京証券取引場はオリンパス株式を監理銘柄に移した。これは、オリンパスが中間決算書の提出が期限に間に合わないと申し出たことに対する処置である。それにしても医療用内視鏡機器分野では世界市場の7割を占め超優良企業が、かくもお粗末な隠蔽工作による粉飾決算を行っていたとはまったくがっかりである。株主、社員に対する背任であるとともに、法社会全体に対する挑戦でもある。私情においては忍びないが、息子には耐えてほしいと思う。
さて、昨日トルコでまた地震があった。先月23日地震があった東部都市ワンの近くである。偶々昨日日大の講義で1999年に私が遭遇したトルコ大地震と併せて触れたばかりである。ワンの地震災害の救援に当たっていた日本人男女2人のNPOスタッフが昨日の地震で崩壊したホテルの下敷きになり、女性は助かったが、男性が死亡した。2次災害のような事故である。人助けに駆けつけて亡くなられた。お気の毒である。
11月 2011のアーカイブ
1640.2011年11月9日(水) 日大国際関係学部で2時限講義
日大国際関係学部の北岡さんから依頼されて講義を行うため新幹線で三島キャンパスへ出かけた。キャンパスは三島駅からゆっくり歩いて10分程度のところにある。戦時中は陸軍野砲部隊の駐屯地だったらしく、当時の石造りの守衛所が説明付きで道路際に建っていた。三島市立北小学校、同北中学校、県立三島北高校に取り囲まれて、校舎から富士山も間近に望める。中々閑静な教育環境にあり学生たちは恵まれているように感じた。
北岡さんとは簡単に打ち合わせをしてから午後の講義に臨む。2時限の授業は「国際時事問題」と「国際メディア論」で、各90分である。70~80名の学生が熱心に聴いてくれたが、60場面のパワーポイント画像を投射して説明した。主に、私が旅行業界に入った動機と経緯、仕事の場でいかに臨場感が大事か、私の危機一髪の海外ひとり旅、観光業界を見る目、旅行業者に求められる条件、現場にこそ真実がある、テロをどうやって予見できたか、等々について事件が起きた時の海外の新聞を持ち込み紹介しながら、若い時にひとりで海外へ出ることが成長を促すことにつながると積極的に海外ひとり旅にトライするよう強く勧めた。
実際に講義をしてみると90分は短かった。2講義とも時間が足りず、打ち切るような幕引きとなりちょっと悔いが残る。
それでも学生たちが興味を抱き、真剣に聴いてくれたのが嬉しかった。それにしても中10分の休憩をとりながら前後90分の講義を立ちっ放しで話し続けることは中々タフなことだ。まぁ北岡さんのお役に立てて良かった。
終えてから北岡さんに食事に誘われ、北岡さん行きつけの寿司店に入る。そこへ北岡さんと親しい千谷基雄特任教授がやって来られ、酒を酌み交わし地場の寿司を食しながら談論風発と相成った。千谷教授は富士通の出身でニューヨーク、カリフォルニアに長く駐在され、それがご縁でその当時ロスにいた北岡さんと知り合うことになったという。
やはり、話題の中心は原発と原子力開発、核問題である。北岡さんも原発反対だし、私も大反対である。3人が異口同音に原子力開発の過程で踏み込んではならない「神の領域」へ人間が入り込んでしまったことが間違いだったということにともに同感した。今日アメリカ政府は、国際的に核管理をアメリカがコントロールしようと考えているはずで、日本が原発開発を放棄することを懸念し、平和利用との名目で日本が原子力開発を続けることを望むのではないかというのが一致した意見だった。
帰途は東横線・綱島へ帰られる千谷教授と一緒に新幹線・新横浜経由で帰ってきた。三島駅構内でぎりぎりの新幹線へ飛び乗ろうと年甲斐もなく走ってエスカレーターで転倒し、いささか向う脛を打ち痛い目に遭ったのは、足が衰えてきたせいだろう。ちょっと情けない。
1639.2011年11月8日(火) 日本はTPPにどう対応するのか。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の是非を巡る政府と民主党内の調整が最終段階に入っている。民主党プロジェクト・チームは明日には提言をまとめ、10日に野田首相が参加を表明する筋書きらしい。その一方で、交渉参加に反対する動きも目につく。その超党派のグループは150人にまで広がっている。公明党、国民新党、社民党、共産党はいずれも反対を表明している。自民党も賛否真っ二つである。それにしてもこのTPP参加問題は些か拙速のそしりを免れない。6月に菅前首相が参加を表明してから、俄かに大きな問題となり、今や国論を2分しかねない勢いである。ざっくり言えば、賛成派は経済界、反対は農業界である。経済界は経団連を筆頭にこれからの自由主義経済下の日本経済を考えれば、関税の原則撤廃は当然で、それなしには経済発展は考えられないと交渉参加を強く訴えている。その一方で、反対派の農業団体は米、野菜などがアメリカから自由に入ってきたら農家は崩壊するといって強硬に反対を唱えている。どうしてこのように1国の大きな問題を衝突寸前にまで追い込んでしまったのだろうか。スケジュールの進め方が拙い。
TPP交渉は21分野について議論される。日本にとって不利な協定ばかりではないことは分かっている。敢然として反対しようという農業団体の考え方は分るが、その後押しをしている国会議員が農家の票に目が眩み、やましい気持ちがあるからだと思われている。それより何より、TPPについて情報が少なすぎるのではないだろうか。これでは経済界と農業団体だけの、内輪の論理が国政レベルへ上がって国内ではしたない喧嘩をやっているような印象だ。
それに両派のお互いの戦い方が良くないと思う。どうも全面的に賛成とか、断固反対を唱えて部分的に歩み寄れる分野について話し合おうとしない。これでは解決方法がないではないか。
どうも議論の仕方が雑で、どうして相手の考えや気持を斟酌するポーズを取れなくなってしまったのだろうか。当事者ばかりでなく、どっちにせよわが国全体にとってもマイナスである。相手をねじ伏せることばかり考えて、相手の意見を上手に取り入れるという発想がどうして浮かんでこないのだろうか。
今のままでは、解決の見込みはなさそうだ。10日に野田首相が決断してから対立する賛成派と反対派がどう折り合いをつけるか。更に、国家にとってマイナスにならないような参加の仕方をどう考えるのか。あまり当てにできるような人物は見当たらないが、ここは‘どじょう’首相が、両者の意見を汲み取り、日本がマイナスを背負わないような結論を導き出してもらいたいものである。
1638.2011年11月7日(月) 消費税値上げの首相発言はどうなったのか?
G20首脳会議に出席していた野田佳彦首相が帰国して、早速長崎市内の故西岡武夫・参議院議長の自宅を弔問した。これから野田首相の前途には難問が待ち構えている。自ら蒔いた難問のひとつは、カンヌ滞在中に2010年代半ばには消費税を10%に引き上げるという唐突な発表だった。民主党内閣は党内に賛否の対立構図が山積である。消費税引き上げしかり、今紛糾しているTPP参加問題もまたしかり、年金の一元化改革もしかりである。
その消費税値上げはどうなるのか、鵜の目鷹の目で注視されている。一部には歳入不足を補うためにその必要が叫ばれていた。また、以前からIMFも日本政府に消費税値上げをすべきと勧告していた。ところが、民主党は総選挙の時から消費税値上げについては逃げていた。実力者である小沢一郎元代表は値上げに反対している。こんな党内事情もあり、党としての統一見解を毅然として示すことができなかった。それがここへ来て突然値上げ公表である。それなら外国で一方的に発表する前に、国会なり、国民にきちんと説明すべきではないか。もう少し順序立ったスケジュールの下に計画を進め、党内で話し合って民主党として考えをまとめることができないものだろうか。その辺りがこの民主党の未熟なところである。
これから消費税値上げに向けて、どのようにロードマップを作り上げていくのだろうか。今日もマス・メディアはまったくこの問題を報じていない。マス・メディアにとっても報道する価値のあるトピックだと思うが、先日現地から流れてきたニュースだけしか伝えられていない有様は異常としか言いようがない。それにしても野田首相の手法はまったく理解できない。何が「安全運転内閣」だ?
民主党はこの先この消費税値上げ問題をじっくり検討し、党内がまとまって結論を出すことができるだろうか。国民としてはやや不安である。これからどういう道筋を辿っていくのか、もう少し消費税値上げの工程について分りやすく説明してほしいものである。
1637.2011年11月6日(日) エッセイの評価はまずまず
知人の北岡和義さんが静岡県三島の日本大学国際関係学部で特任教授を務めておられるが、先日その北岡さんから要請をいただき、9日に学部授業の内2コマ分を講義することになっている。科目は「国際時事」と「国際メディア」というそれぞれ90分授業だが、今日北岡さんと電話とメールでやり取りして「臨場感から知る現実の世界」と付けたタイトルのレジュメを送って簡単な打ち合わせを済ませた。
もとよりその国際関係の科目を専門的に学んだことはないし、その知識があるわけでもない。北岡さんからは国際問題に対する持論、私の海外旅行体験、特に海外でのリスキーだった旅行体験と、旅行業の実態について学生に話してほしいということだったので、パワーポイントにも臨場感のある写真を取り入れて作成したつもりである。どれだけ期待に応えられるか分らないが、学生たちを退屈させない自信だけはある。9日が楽しみである。
さて、時間をかけて書き上げたドキュメンタリー風エッセイ「トラック島の日系大酋長が見せた大和魂と謎」を「知研フォーラム」に寄稿したが、掲載予定の写真が抜け落ちて刷り直ししてもらうことになっていた。会員には写真が落ちた「知研フォーラム」誌に、抜け落ちた写真だけをA4用紙にコピーして送られたようだが、大量注文をいただいた森喜朗元総理分300冊はそうもいかず、私の追加分150冊を併せて正しい冊子に刷りなおしてもらった。2日にそれらの内130冊を友人らに郵送したが、昨日辺りからぼつぼつ受け取ったというお礼状や受領の連絡をいただいている。おかげさまでエッセイは割合好評のようで、内心嬉しく思っている。中には読後感のほかに親切なコメントを書き加えてくださる人もいる。自分としては資料を集め、関係者にも会い、かなり調査して書いたドキュメントでもあり、また高校の先輩方について書いたものでもあり、かなり力を注いで書き上げた。ある大手新聞記者だった方からは、「少し書き足せば、立派な売り物になる小説(ノン・フィクション)になる」と言っていただいたのは、お世辞が含まれているとは言え、ある程度評価してくださったことでもあり嬉しいものである。時間をかけて加筆・修正して出版するのかどうか決めたいと思っている。
今年は東日本大震災のため、明るい行事の予定が変更された。その中でプロ野球が、開幕を遅らせたり、電力不足を鑑みてナイター開催をある程度自粛して、漸く最後の仕上げどころの日本シリーズ開催へ向けセ・パ両リーグの出場権を争うクライマックス・シリーズを行っている。今日やっと日本シリーズ出場2チームが出揃った。昨日はパの優勝チームの福岡ソフトバンク・ホークスが出場を決定し、今日セの優勝チームの中日ドラゴンズが出場権を獲得した。
これで、実力のある2つのチームが天下晴れて日本一を争うことになった。昨年のようにパの3位チームが日本シリーズへ出場し、日本一の座を占めるなんておかしなことにならなくてやれやれである。くどいようだが、こんな複雑なシステムは止めて、すっきり両リーグの優勝チームが雌雄を決することができないのか。
1636.2011年11月5日(土) 西岡武夫・参議院議長現職のまま逝去
今朝の新聞のトップ記事はギリシャとイタリア関連記事で埋め尽くされている。トップ見出しは「ギリシャ、包括策受け入れ」「イタリア、IMF監視下に」である。夕刊になると「ギリシャ内閣を信任」と「西岡武夫参院議長死去」である。
結局パパンドレウ政権は国会の信任投票の結果、153対145で辛うじて信任された。ギリシャ再生のためにはなりふり構わず、EUから融資を引き出すことに懸命である。今日中にも与野党連立へ向けて協議を開始して、EU提案の包括支援策を議会で承認する必要がある。とりあえず最悪の事態は回避されたが、これからも危機は続く。
元気そうに見えたが、突然のように西岡参院議長が肺炎により亡くなられた。この政治家もとかくの噂のある人だった。父親が元長崎県知事で典型的な二世議員だ27歳の若さで衆院議員に初当選したが、人格的にいかがかと思えるパフォーマンスで失笑を買ったり、わがままぶりで評価を下げていた。保守各党を遍歴したところに彼のわがままな姿が垣間見える。いい年をして母親離れができず、新自由クラブをともに立ち上げた河野洋平氏と袂を分かった時にも、母親がしゃしゃり出てきて河野氏へ罵詈雑言をぶつけていた。いつまでも独り立ちできない御仁だった。衆院選で落選するや、長崎県知事選に出て金子原二郎氏にも敗れ、以後参院選で国会議員に復活はしたが、元々政治家としては人格・識見を疑いたくなる人だった。
今年7月ごろから中立であるべき参院議長の職にありながら、菅前首相に辞職を求める発言を繰り返し、相変わらず自分勝手なパフォーマンスで目立っていた。夕刊記事から察するところ、西岡氏が菅前首相に厳しい姿勢を取り続けていたのは、どうも地元選挙区の諫早湾干拓事業に対して、菅前首相が昨年12月福岡高裁の開門を命じる、西岡氏にとって容認し難い判決を受け入れると表明したことに対する怨念が腹の中にあったからではないか。選挙区支持者の利益のために、立場を異にする前首相を攻撃していたのだ。
名だけは通り、やることはやっていたが、これという功績はあまり知らない。引っ掻き回すだけの政治活動では、周囲が踊らされるだけではないのか。虎は死して皮を残したが、西岡氏は果たして何を残したのか。
1635.2011年11月4日(金) ギリシャ、国民投票案を撤回
昨日から俄かにクローズアップされたギリシャの財政支援策が、パパンドレウ・ギリシャ首相の変質とも受け取れる発言の真意がいぶかしがられてEU各国はてんやわんやの騒ぎである。そこへ昨日からG20首脳会議がカンヌで開催されたため、世界中から大物首脳が続々とカンヌ入りしている。一癖も二癖もある大物とは言い難いが、野田首相も‘ベビーギャング’安住淳・財務相を伴い現地入りした。
何が騒ぎの発端かと言えば、ギリシャはユーロ国から支援策を提示されたが、パパンドレウ首相が受け入れ前に国民投票にかけると不意に公表したことに、独仏を始め、支援国から強い反発と批判が高まったことである。独仏両国首脳は支援策を受け入れないことは、ユーロ圏からの離脱を意味するとギリシャに迫った。ギリシャ議会も野党がユーロ圏からの離脱には反対で、この動きを受け入れてパパンドレウ首相は国民投票を回避することを発表した。今夜にも首相の信任投票が行われるが、この数日国辱的な失態を曝け出したパパンドレウ首相が信任されても、次期首相に再選される可能性は少ないと見られている。
11年前妻とエーゲ海クルーズを楽しんだ時、韓国が不況の真っ只中にあってギリシャでは韓国人の旅行者が減少したと聞いたが、その年ギリシャは勇躍ユーロへ加盟した。当時の報道だとギリシャのユーロ加盟は秘かに時期尚早と見られていたようだ。あれから11年を経て、韓国経済は立派に回復し、他方ギリシャは昨今国家破産の危機に直面している。ヨーロッパ各国の中にはギリシャの加盟を認めたことが失敗だったと思っている国もある。何が国家の命運を左右するか、一寸先は闇である。
ギリシャの財政逼迫は、ユーロッぱ各国、日米、そしてBRICsにも大きな影響を与えかねない。さぞやギリシャが生んだ哲人ソクラテスもギリシャのこの惨状を嘆いていることだろう。
今日イタリア国債がユーロ導入後最安値にまで急落した。次はイタリアか? せめてこの流れが回りまわって日本へやって来ないことを願うばかりである。
1634.2011年11月3日(木) 平穏に73歳の誕生日を迎える。
満州事変から2.26事件を経て、戦時色が徐々に色濃くなっていった昭和13年の、昔風に言えば「明治節」、現代では「文化の日」の今日、東京・中野に生まれた。「節夫」という名前も「明治節」から1文字いただいた。27年前に母が同じ73歳で亡くなったので、母と同じ年齢だけ生きてきたことになる。新潟に住む二男が妻子を伴ってやってきたので、まず妻の実家の墓がある多磨墓地から、両親が眠る中野の宝仙寺へ回って墓参りをする。夕食は息子家族と外食を楽しむ。
さて、あれだけすったもんだして何とか危機を脱したと思ったギリシャの財政危機が、またぶり返しそうな雲行きである。昨日になってギリシャ不安が再燃している。火種はギリシャ自体にある。つい1週間前EU圏内ユーロ国が難産の末、ギリシャへ支援することを漸く決定し、今後はギリシャがこの温かい支援を受けてどう立ち直るかとギリシャの再生を注視しようという矢先に、ギリシャ政府は折角の援助を受け入れるかどうかを国民投票にかけると言い出した。緊縮財政を続けることに国民の反発が恐いのだ。支援は確かにギリシャにとっては厳しい内容となっている。だが、先日打ち出したギリシャ支援策はギリシャにとっては待ったなしの救済策で、他には手段がないように思える。ギリシャが支援を受ける厳しい条件は、対価としてギリシャ国民が耐え忍ぶことが義務づけられている。
その条件とは給与の一括20%削減であり、消費税の値上げほかである。当然ギリシャ国民の反発は予想されるが、支援する側としては、ここまで自分たちが身を削って支援しようというのに、なぜ我慢できないのか、支援国だって厳しい財政事情の中で同じ仲間を助けてあげようというのに、勝手なことばかり言うなとの不満もあろう。まず火元のギリシャ自体が自力で立ち直ろうとする姿勢を見せなければ、いずれギリシャは見放され、世界の孤児となってしまうだろう。
ギリシャの国民投票の意向がヨーロッパは言うに及ばず、アメリカ、アジアにまで波及して世界同時不況の様相も見せ始めた。EUのリーダー格であるドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領がギリシャのパパンドレウ首相に支援策を受け入れるよう懸命に説得しているが、ギリシャは依怙地になって国民投票をちらつかせている。ギリシャでは支援策受け入れの前にパパンドレウ首相に対する議会信認投票が行われ、そのうえで国民投票が来月初に行われる。
仮に国民投票が行われた場合、まず国民は支援策に反対するだろう。その時EUには最早ギリシャを救うべき次の手はない。最悪のケースだと、ギリシャはEUから支援を得られず、債務不履行による国家破綻、ユーロ圏離脱の可能性を孕んでいる。そうなった場合、ギリシャはどうなるのか。ヨーロッパはどうなるのか。更に日本だって他人事ではいられない。その時日本はどうなるのか。
1633.2011年11月2日(水) 国と自治体は放射線の危険性を真剣に考えているのだろうか。
やらせメール事件や第3者委員会の調査報告書を否定するような最終報告書を提出して、原発に対する世間一般の認識とずれ、世の非難を浴びている九州電力が、福島第1原発事故以来初めて九州の玄海原発で停止中の4号機の試運転を開始し、明日にも元通り運転を再開する予定である。八方塞りの九電はトラブルで停止させていたが、トラブルの原因や原因と対策をまとめた報告が国から「概ね妥当」と評価されたことを踏まえて運転を再開することを決めた。
ところが、どうもこの辺りの事情が分かりにくい。再開に当たっては国が決めたストレス・テストをやるのかと思いきや、その対象は定期検査で止まった原発が対象で、玄海原発4号機の場合はトラブルのために停止したので、対象外だそうで、理屈を捏ね回した決め事である。関係者の発言も分かりにくい。
枝野幸男経産相は、地元と協議のうえ電力会社が決めるべきことと述べた。こんな大事なことをそう簡単に決められては堪らない。これでは、国は原発の安全性については責任を持たないと言っているようなものではないか。菅直人・前首相は原発中止を、野田首相は漸次原発縮減を主張した。枝野氏の発言は両首相の言葉と相反するのではないか。また、枝野発言によって地元自治体は原発再開を国が認めたと認識している。岸本英雄・玄海町長は「4号機については国から安全性の確認を得た」と話し、古川康・佐賀県知事も「国が判断されたのなら、これまでと同じように受け入れる」と力強いサポート体制を口にした。これで事業会社の九電は地元の理解を得られたと判断し、願い通り運転再開に踏み切ることを決定した。なぜか関係者はみんな自分の判断から逃げ、他に責任をおっかぶせている。原発に関わることになるとなぜか怪しげで、不可解な行動に出る。原発は直ぐにも再開したい、されど世間の目が恐い。どうも本音は、法衣の下に鎧をまとっているようだ。
今日もまた原発に関して危なっかしいニュースが伝えられた。東京電力は、福島第1原発2号機に核分裂反応があったと発表した。一部には臨界状態だったと指摘されている。しかし、鉄面皮で証拠隠蔽のリーダー格・東電はキセノン検出量が微量だったため、燃料が溶融しているわけではないと言い張っている。細野豪志・原発担当相もあまり深刻には捉えていないようだ。この一連の無神経な言動を見てみると、数日前に検出された世田谷区八幡山の放射線漏れについて、行政がすぐ原因を調べることもせず、今日になって漸く現場を掘削した対応によく似ている。結局先週の世田谷区弦巻と同じくラジウムが原因らしいと見られている。調べればすぐ分ることを休日を理由に引き伸ばして手をつけなかった。この鈍感ぶりが風評被害をもたらし、周辺住民に不安を与え住民の気持ちを傷つけているのではないだろうか。
福島第1原発事故以来、放射性物質に対して神経質になる一方で、案外無頓着でのんびりしている印象を受けるが、そんなことで良いのだろうか。
1632.2011年11月1日(火) 母校創立90周年記念式典に出席
母校・神奈川県立湘南高校創立90周年記念式典が鎌倉芸術館大ホールで挙行された。一寸早めにJR大船駅に着いたので、昼食でも取ろうと大船駅ルミネ店内をぶらぶらしていたら、偶然にも1枚のポスターが目に入った。「東山魁夷・平山郁夫日本画巨匠版画展」を無料で開催していたのである。展示作品はほとんどリトグラフだったが、中には欲しい作品が数多くあった。しかし、最安値でも1点50万円は下らない。観るだけで芸術心を満たして会場へ向う。会場は来賓、卒業生、生徒、保護者を交えて2階席までいっぱいである。母校は大正10年に神奈川県内で6番目の県立中学校としてスタートして以来、90年の歳月が過ぎ去った。この間全日制、定時制、通信制を合せると卒業生の数は、実に4万6千名に上るそうだ。
式典は午後1時から3時半まで行われた。和やかな雰囲気の中でOGのNHKアナ・渡辺あゆみさんの司会進行によって手際良く進められた。ゲストスピーカーは、偉大なる先輩、2010年ノーベル化学賞受賞者・根岸英一博士の登場で、難しい話を幾分分り易く話された。聴けば、博士ご夫妻は昨日シカゴ、一昨日はニューヨークで雪に閉じ込められ、予定通り今日の式典に間に合うかどうかを心配されていたと笑いながら仰っておられたが、今日は突き抜けるような秋晴れで、演題は「21世紀を救い、支える科学―化学」と題して、図を使いながら説明された。私にとっては少々難しい化合物の話だった。博士の話で強く印象に残っているのは、人生の師をいかに見つけ、教えを請うかということが大切であるということと、できるだけ若いうちに世界を見てみることが重要だと述べられたことである。特に後者については3月にお会いした時私自身博士と意気投合した考えである。
式典会場では弦楽部、吹奏楽部の演奏や合唱部のコーラスも久しぶりに楽しく聴けた。
更に楽しかったのは、マイクロバスで移動した鎌倉プリンスホテルで開催された祝賀会だった。会場のバンケットホール「七里ガ浜」は、椅子席350席の大入りで、コースメニューを味わいながら、OBのゲスト・ミュージカル俳優沢木順さんの洒落たトークと声量のある歌声にすっかり魅了された。元合唱部員だった根岸博士も沢木さんにアシストされながら、素晴らしいテノールで「あざみの歌」「さくら貝の歌」ほかを朗々と歌われた。根岸博士ご夫妻、義兄の大正大学名誉教授・鈴木健次さん、森ビル会長の森稔さん、渡辺あゆみさんとも話すことができた。
根岸ご夫妻には3月にお会いした時の写真にサインをしてもらい、先輩のトラック島大酋長・相澤進と佐々木信也さんについて書いたエッセイ掲載の「知研フォーラム」を差し上げた。同期生や、親しい先輩や後輩にも会えてとにかく楽しい時間を過ごすことができた。これだけ大勢の参加者が集まった宴会で、こんなにお互いに打ち解けた気分のいいパーティはこれまであまり記憶にない。素晴らしい歴史ある伝統校で高校生活を送れて、幸せの一語に尽きると思っている。帰り道友人と歩きながら心から「楽しかったなぁ」と語り合った。