俄かに兜町を騒がせ、国際問題化したオリンパス㈱の経理偽装工作事件に頭を痛めている。実は長男が問題のオリンパスに勤務している。今年入社20年目になり、先日の「文化の日」には、私の誕生祝として夕食をご馳走してくれたばかりで、その時はまだ会社側は企業買収に投資した巨額の資金は、適正と主張していた。会社のコメントを信じていた、内視鏡販売部門の1セールスマンに過ぎない息子には、まさか会社がこのような不正行為を行っていようなどとは思いもよらなかっただろう。それが一転して一昨日高山修一・新社長が1990年代に財テクで損失を出し、その穴埋めのために、当時の社長らごく一部の役員が「飛ばし」という経理上の偽装工作を行っていたことを告白した。これにより事態は大きく変わった。
外から見て、オリンパスほどの世界的優良企業が、なぜ財テク失敗による穴埋めを法律を犯してまで処理しなければならなかったのか理解に苦しむ。いかに法律を犯して穴埋めしてもいずれ明らかになるのは分りきったことである。それが、1990年代の初めから長きに亘って行われていたとは、常識的にはとても考えられない。会社ぐるみの悪質な事件と受け取られ、日本国内のみならずアメリカではFBIが捜査に乗り出すとも言われ、最初に不正を内部告発し、解任されたイギリス人社長ウッドフォード氏の母国イギリスでは、メディアが大々的に取り上げウッドフォード氏の主張を擁護している。これでオリンパスの立場は一層苦しくなった。
それにしても20年近くに亘ってよくもこのような偽装工作が暴露されなかったものだと驚く。前会長・前社長の菊川剛氏、前副社長・森久志氏、常勤監査役・山田秀雄氏らが首謀者であり、隠蔽者であると槍玉に上げられたが、彼ら以外に経理担当者らが知らない筈がないし、監査法人は何を調べていたんだと言いたい。
それが、今日になって損失の隠蔽、つまり企業買収に投じた買収額が高すぎると指摘した監査法人がその直後の2009年に解約され、新しい監査法人に変更されていたことが新聞で明らかにされた。新たにオリンパスの決算書を監査した新監査法人「新日本監査法人」が、不正をどう取り扱ったのかは報じられていない。この不祥事に伴い、オリンパスの株価は急落し、連日ストップ安を続けて最高値時に比べて1/8程度にまで下がり、今日東京証券取引場はオリンパス株式を監理銘柄に移した。これは、オリンパスが中間決算書の提出が期限に間に合わないと申し出たことに対する処置である。それにしても医療用内視鏡機器分野では世界市場の7割を占め超優良企業が、かくもお粗末な隠蔽工作による粉飾決算を行っていたとはまったくがっかりである。株主、社員に対する背任であるとともに、法社会全体に対する挑戦でもある。私情においては忍びないが、息子には耐えてほしいと思う。
さて、昨日トルコでまた地震があった。先月23日地震があった東部都市ワンの近くである。偶々昨日日大の講義で1999年に私が遭遇したトルコ大地震と併せて触れたばかりである。ワンの地震災害の救援に当たっていた日本人男女2人のNPOスタッフが昨日の地震で崩壊したホテルの下敷きになり、女性は助かったが、男性が死亡した。2次災害のような事故である。人助けに駆けつけて亡くなられた。お気の毒である。