環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の是非を巡る政府と民主党内の調整が最終段階に入っている。民主党プロジェクト・チームは明日には提言をまとめ、10日に野田首相が参加を表明する筋書きらしい。その一方で、交渉参加に反対する動きも目につく。その超党派のグループは150人にまで広がっている。公明党、国民新党、社民党、共産党はいずれも反対を表明している。自民党も賛否真っ二つである。それにしてもこのTPP参加問題は些か拙速のそしりを免れない。6月に菅前首相が参加を表明してから、俄かに大きな問題となり、今や国論を2分しかねない勢いである。ざっくり言えば、賛成派は経済界、反対は農業界である。経済界は経団連を筆頭にこれからの自由主義経済下の日本経済を考えれば、関税の原則撤廃は当然で、それなしには経済発展は考えられないと交渉参加を強く訴えている。その一方で、反対派の農業団体は米、野菜などがアメリカから自由に入ってきたら農家は崩壊するといって強硬に反対を唱えている。どうしてこのように1国の大きな問題を衝突寸前にまで追い込んでしまったのだろうか。スケジュールの進め方が拙い。
TPP交渉は21分野について議論される。日本にとって不利な協定ばかりではないことは分かっている。敢然として反対しようという農業団体の考え方は分るが、その後押しをしている国会議員が農家の票に目が眩み、やましい気持ちがあるからだと思われている。それより何より、TPPについて情報が少なすぎるのではないだろうか。これでは経済界と農業団体だけの、内輪の論理が国政レベルへ上がって国内ではしたない喧嘩をやっているような印象だ。
それに両派のお互いの戦い方が良くないと思う。どうも全面的に賛成とか、断固反対を唱えて部分的に歩み寄れる分野について話し合おうとしない。これでは解決方法がないではないか。
どうも議論の仕方が雑で、どうして相手の考えや気持を斟酌するポーズを取れなくなってしまったのだろうか。当事者ばかりでなく、どっちにせよわが国全体にとってもマイナスである。相手をねじ伏せることばかり考えて、相手の意見を上手に取り入れるという発想がどうして浮かんでこないのだろうか。
今のままでは、解決の見込みはなさそうだ。10日に野田首相が決断してから対立する賛成派と反対派がどう折り合いをつけるか。更に、国家にとってマイナスにならないような参加の仕方をどう考えるのか。あまり当てにできるような人物は見当たらないが、ここは‘どじょう’首相が、両者の意見を汲み取り、日本がマイナスを背負わないような結論を導き出してもらいたいものである。