母校・神奈川県立湘南高校創立90周年記念式典が鎌倉芸術館大ホールで挙行された。一寸早めにJR大船駅に着いたので、昼食でも取ろうと大船駅ルミネ店内をぶらぶらしていたら、偶然にも1枚のポスターが目に入った。「東山魁夷・平山郁夫日本画巨匠版画展」を無料で開催していたのである。展示作品はほとんどリトグラフだったが、中には欲しい作品が数多くあった。しかし、最安値でも1点50万円は下らない。観るだけで芸術心を満たして会場へ向う。会場は来賓、卒業生、生徒、保護者を交えて2階席までいっぱいである。母校は大正10年に神奈川県内で6番目の県立中学校としてスタートして以来、90年の歳月が過ぎ去った。この間全日制、定時制、通信制を合せると卒業生の数は、実に4万6千名に上るそうだ。
式典は午後1時から3時半まで行われた。和やかな雰囲気の中でOGのNHKアナ・渡辺あゆみさんの司会進行によって手際良く進められた。ゲストスピーカーは、偉大なる先輩、2010年ノーベル化学賞受賞者・根岸英一博士の登場で、難しい話を幾分分り易く話された。聴けば、博士ご夫妻は昨日シカゴ、一昨日はニューヨークで雪に閉じ込められ、予定通り今日の式典に間に合うかどうかを心配されていたと笑いながら仰っておられたが、今日は突き抜けるような秋晴れで、演題は「21世紀を救い、支える科学―化学」と題して、図を使いながら説明された。私にとっては少々難しい化合物の話だった。博士の話で強く印象に残っているのは、人生の師をいかに見つけ、教えを請うかということが大切であるということと、できるだけ若いうちに世界を見てみることが重要だと述べられたことである。特に後者については3月にお会いした時私自身博士と意気投合した考えである。
式典会場では弦楽部、吹奏楽部の演奏や合唱部のコーラスも久しぶりに楽しく聴けた。
更に楽しかったのは、マイクロバスで移動した鎌倉プリンスホテルで開催された祝賀会だった。会場のバンケットホール「七里ガ浜」は、椅子席350席の大入りで、コースメニューを味わいながら、OBのゲスト・ミュージカル俳優沢木順さんの洒落たトークと声量のある歌声にすっかり魅了された。元合唱部員だった根岸博士も沢木さんにアシストされながら、素晴らしいテノールで「あざみの歌」「さくら貝の歌」ほかを朗々と歌われた。根岸博士ご夫妻、義兄の大正大学名誉教授・鈴木健次さん、森ビル会長の森稔さん、渡辺あゆみさんとも話すことができた。
根岸ご夫妻には3月にお会いした時の写真にサインをしてもらい、先輩のトラック島大酋長・相澤進と佐々木信也さんについて書いたエッセイ掲載の「知研フォーラム」を差し上げた。同期生や、親しい先輩や後輩にも会えてとにかく楽しい時間を過ごすことができた。これだけ大勢の参加者が集まった宴会で、こんなにお互いに打ち解けた気分のいいパーティはこれまであまり記憶にない。素晴らしい歴史ある伝統校で高校生活を送れて、幸せの一語に尽きると思っている。帰り道友人と歩きながら心から「楽しかったなぁ」と語り合った。