やはりと言うべきか、日本政府がひた隠しに隠していた日米外交文書の核疑惑に関する秘密書類が外務省の調査により発見された。岡田外相が今月末をメドに書類の存在確認作業を行うよう外務省に命じていたものである。
すでに秘密文書があることは、ライシャワー元駐日米大使や吉野文六・元外務省アメリカ局長の証言があったうえに、米公文書などでその存在が明らかになっており、いかに日本政府が否定しようとも核疑惑の関係書類の存在は隠しようもなく、ウソが白日の下に晒されるのは時間の問題と見られていた。そして、実際に密約文書が見つかったのである。これまでの自民党政府関係者は、証拠隠滅、虚偽証言の点でこれにどう抗弁し、どのように責任を取ろうとするのか。
政府はその他の密約文書とともに来年1月に調査内容を公表することを約束した。鳩山内閣としても従来の「密約は存在しない」とする政府見解の変更を検討するらしいが、しっかり注視したい。
今回公表した核疑惑は、1960年1月安保条約改定時に締結されたとされる「核兵器搭載の艦船や航空機の寄港、飛来は日米安保条約に定める『事前協議』の対象外とする」という密約に関するものである。これを政府はいくら国会で追及されようとも、断じて認めず国民に対して大ウソをつき通していたのである。これ以外にも日米密約問題は、3つもある。
ひとつは、朝鮮半島有事の際の米軍の戦闘作戦行動であり、2つ目は72年の沖縄返還時の有事の際の核持ち込みであり、3つ目は沖縄返還時の米軍基地跡地の原状回復補償費の肩代わりに関する密約である。このようにわが国にとって重要で、莫大な経費もかかる案件を、国民の目から逸らし、これまで徹底してその存在を否定し続けた政府の責任は重い。
来年1月にどういう形でこれまでの経緯を説明するつもりなのか、マス・メディアは徹底してこれまでの政府の対応を究明すべきである。
それでなければ、最近も官房機密費と称して使い道が公開されていないまま、どこかで使い切っていたように、国家同士の密約を結び、それへ官房機密費をどんどん使われたのでは、日本は秘密国家となり、国民が知らない間に勝手な国家間の取り決めで条約が結ばれ、官房機密費が使われるというケースが堂々まかり通るということになる。これでは「国家は国民のために非ず、ごく一部の政治家のためにある」ということになりはしないか。