眠る間もなく前夜11時にクマールさんが迎えに来られた。フライトは北京経由の中国国際航空で出発時間は3:05である。空港まで約30分なので、やや早い気がするが、インドではチェック・インが3時間前と聞いた。深夜にインディラ・ガンジー空港まで飛ばして、着いてみるとターミナル・ビルの前は車の洪水で車をつけるのも一苦労だった。世話になったガイドのクマールさんとドライバーのシンさんにここで別れて、人ごみを掻き分け、ボディチェックを受けて空港建物内へ入る。
フライトのチェックインはトランクを預けて簡単に終ったが、待ち時間が3時間もある。いざ搭乗となったら、いつの間にか搭乗ゲートが変更になっていて大いに戸惑う。案内が徹底されていないからだ。4番ゲートのはずが、5番に変っているが、その表示がはっきりしない。しかもここでインドと中国の険悪な関係を知らされることになった。空港内では中国国際航空の表示が一切出ない。4日前に到着した時も、税関で荷物を引き取るターンテーブル番号の表示がなく、空港係員に尋ねて彼がトランシーバーで問い合わせてやっと分かったという按配である。今日も5番ゲートには、普通表示される航空会社略号とフライト№が電光表示板に表示されない。そのうえ、ショルダーバッグに航空会社のタッグが付いていないからと言って、再び荷物検査を強制される有様だった。
そう言えば、宇都宮から参加した女性のひとりは、日本人に帰化して「伊藤きよみ」さんと仰っていたが、中国人だった。そうとは知らないクマールさんが最初から中国の悪口を言い出したので、止めてほしいと「伊藤」さんが抗議してクマールさんが謝った経緯がある。
インドと中国は同じBRIC’sではあるが、どうも昔から対立関係は根深く、国民同士もお互いに津の突き合わせていて、ことはそう簡単には解決しそうもないようだ。
薄い雪景色が見られる北京空港で乗り換え、成田空港へ帰ってきたが、今回の旅は内容的にはあまり期待していなかった割には、どうしてどうして中々良かった。他に成田からHISで同行した人が15人もいたが、ほとんど3人ずつに分かれて同じ観光地を見学していた。彼らの言い分を聞いてもこういうように小さなグループに分かれて見学出来たのは、期待もしていなかったが、良かったとかなり高く評価していた。私も格安旅行だから、大きな期待もしていなかったが、ホテルのグレードアップもあって、更に何よりもインド自体の魅力があって、旅行としてはほぼ満足出来るものを見せてもらったと思う。
堀田善衛は生前もう2度とインドには行かないと書いている。それは、嫌いと言うのではなく、あまりにも深く考えさせられる国だからこそだそうだ。私は確かに深く考えさせられたが、だからこそ逆にもう1度近いうちに訪れてもっとインドという国を知ってみたい。それも必ずベナレス(バラナシ)を訪れてみたいと強く感じた。得た物は実に大きいインドの旅だった。