尖閣諸島問題で中国の言いたい放題の嫌がらせに辟易していたのに、今日になってまた新たな難題が降りかかってきた。ロシアのメドベージェフ大統領が北方4島のひとつ、国後島を訪問したのである。戦後旧ソ連、ロシア首脳が誰も訪れなかった占領地へここへきて現職の大統領が訪れた。日本政府はこれまでこの種の噂が流れるたびに、ロシア政府へ取り止めるよう説得していたが、ついに豪腕ロシアは中国の尖閣諸島領土問題と歩調を合わせるかのごとく、国内視察という名目をつけて北方4島の実効支配をロシア国内向けのみならず、世界へ向けてアピールし出したのだ。
確かに日本にとっても難しい問題ではある。戦後65年に亘って北方4島は支配され、ロシア住民がすでにそこに生活しているから余計厄介である。ロシアの領土侵略に関して日本として絶対承服出来ないのは、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して落城寸前の日本に宣戦布告して、なお日本が8月15日に天皇のポツダム条約受諾詔勅により無条件降伏を宣言した。にも拘わらずソ連はその日以降も無抵抗の日本の北方領土へ容赦なく侵略し、9月2日の終戦公文書署名を以って終戦と看做し、その日以前に占領した北方4島は大戦の戦果とうそぶき、戦勝国として北方領土の実効支配を始めたことである。
明らかに相互外交協定を破って参戦し、白旗を掲げた敵に対して略奪を行って、それを戦果と称して自国の立場を正当化している。こういう違法にして、悪辣で非紳士的行為を世界は容認するのだろうか。
尖閣諸島の中国領土を主張する中国にしてもロシアの言い分と同じように、理が通らない。この両国が対日外交では、「歴史的事実を捏造している」として裏で手を握っている節がある。
日本はどうして、敵視的根拠と史実を提示し、論理を尽くして国際社会にロシアと中国の違法性と理不尽な所業を訴えて、古くから日本領土であることを知らしめようと啓蒙活動をしないのだろうか。いつまでもこのような力で押されている間に、世界は日本の論拠を信じなくなるのではないかと心配する。
菅首相が遺憾の意を表明し、前原外相が駐日ロシア大使を呼びつけて抗議をしたところで、件の大使は大統領の国後島訪問はロシアの国内問題であると柳に風である。国後島島民に尋ねれば、何世代にも亘って島に住んでいるので、島から出る気持は毛頭ないという。その島の持ち主は本来日本人だということが、彼らには分らない。分らなくしたのは、代々の日本政府の寄らば大樹の陰の外交政策である。今の日本の信念のない政治力と軸のない外交力では、とても海千山千の諸外国を相手にして太刀打ち出来そうもない。
この調子では百年後には、北海道も佐渡も隠岐も対馬も沖縄も、欲深い近隣諸国の領土になってしまうのではないか。