日本時間の明け方近くに続けられていたアメリカ議会の公聴会2日目は、トヨタの豊田章男社長を参考人に召還して、トヨタ批判の急先鋒の議員を筆頭に豊田社長にあらゆる質問をぶつけた。一見してこういう場が得意ではなさそうな豊田氏の顔にはスマイルが見られず、終始暗い表情でうるさ型の議員の質問に応えた。
しかし、これではまるでつるし上げである。公開処刑である。豊田社長はアメリカ中のさらし者になっている。この公聴会というシステムは、果たしてその名に叶った公聴会の公聴会になり得ているのか疑問でさえある。こういう魔女狩りを利用して不正を暴くとか、国民の安全のためと詭弁を弄して今後も続けていくとするなら、これは最早自由主義ではなく、一種の経済統制ファッショではないかとこの公聴会という制度そのものに疑問を呈せざるを得ない。
今日の豊田社長は昨日のレンツ社長ひとりの時とは違って、別の北米統括会社の稲葉社長と同席し、自分の考えを述べた。しかし、出席した12人の議員の質問に対して応えたトヨタの考えが、彼らに必ずしも納得されてはいないとの印象を受けた。3時間半の公聴会を終えて豊田社長は、アメリカのトヨタ関係者の討論集会で励まされたことに感激したのか、つい涙ぐんだが、このあたりは正直なところもっと我慢して、涙を見せないで欲しいと思った。
こういう公衆の面前では、ディベートの経験が足りないような応答ぶりの豊田社長は、今後アメリカにおける出番が増える事態に備えて、これからでも良いから質疑応答のトレーニングを積んだ方が良いと感じた。
それにしても、アメリカ側議員の「日本とアメリカの文化の風土が違う」とか、「アメリカの顧客を軽視しているのではないか」や「苦情を社内に伝えないような内規でもあるのか」のような無礼な質問に至っては、日本最高の国際企業を何とかへこませてやろうとの底意地の悪い気持ちが見え隠れしているような気がしてならない。これこそジャパン・バッシング以外の何物でもない。
しかし、ともかくこの危機を切り抜けるのはトヨタ自身に他ならない。一日も早くこの苦境を脱して立ち直って欲しいと願うばかりである。それはそれとしてどうもアメリカ人の手法が理解できない。