朝から昨日の参院選の結果を分析してテレビも新聞もてんてこ舞いである。特徴的なことは、民主党が大きく負けて改選議席を54から44議席にまで落とした一方で、下り坂だった自民党が38議席から51議席へ伸ばし、多少息を吹き返したことである。ほかには新しい政党「みんなの党」が、一気にゼロから10議席を獲得して非改選議員を含めて11議席となり、議会で議員の質問提案権を獲得し、参議院でキャスチング・ボートを握ったことである。
民主党の惨敗の象徴的な現象は、1人区の8勝21敗である。3年前には23勝6敗だった。野党各党は民主党がこれだけ負けたので責任を取って首相は辞めるべきと主張している。菅首相は9月に代表選があるので、それまで自分を含め現体制のまま進めたいと言っている。今回落選した千葉景子法相も引き続き現職に留まる模様である。民主党の敗北により、参議院における民主単独過半数はもとより、国民新党が議席を失ったので、与党過半数も取れなかった。この結果これからの国会運営は一段と難しくなる。
昼間から夜へかけて各党代表者が選挙結果を踏まえて討論会を行ったが、いずれも民主党のマニフェスト違反を責めている。ところで、日本の政治に詳しいあるイギリスの大学教授に依れば、「マニフェスト」とは「構想」の意味であって、約束とか公約のように拘束された意味ではなく、変更することは充分考えられると言っている。
一方、「みんなの党」の渡辺喜美代表は選挙前から「アジェンダ」「アジェンダ」と声高に叫び、この「アジェンダ」を「政策課題」と訳しているが、辞書を引けば「協議事項」とある。似たような意味ではあるが、かつて文部省の海外教員派遣団にお供した当時、アメリカの教育委員会の先生方はあまりそれまで聞いたことのなかった「マニフェスト」や「アジェンダ」という言葉を頻繁に使って分りやすく説明してくれた。その時の私の印象から言えば、教育現場でも分りやすい意味で使われ、それほど強制力を持って使われた難しい言葉のようには考えなかった。事情は違うが、どうして日本語で言えば分ることを外国語で分かりにくくしてしまうのだろうか。
今日の朝日夕刊が労働組合や業界団体の「集票力」は、軒並み激減していると分析している。比例候補の得票から割り出したものだ。日教組も落ち、全国建設業協会も落ち、気になっていた日本遺族会も落ちた。遺族会は自民党から出馬した水落敏栄さんが苦戦の末、2回目の当選を果たした。だが、水落さんの獲得票、13万2千票は、3年前の23万票からみるとかなりの落ち込みである。次回の参院選ではもっと苦戦することははっきりしている。水落さんとは何度も一緒に戦没者遺骨収集事業でマリアナ諸島を訪れた。堅実な仕事ぶりと指導力が買われて、6年前遺族会世襲議員として参議院議員に選出された。その間参議院文教委員長を務めたが、戦没者遺族の数が年々減っていくことと、遺族会の先細りを気にされていた。いま現実にこのような集票のトレンドをみると、確かにあまり明るい展望が見えない。20年以上に亘って一緒に神聖な仕事をしたということに懐かしさを覚えるとともに、多少の寂しさを感じる。
いろいろなことを考えさせられた今回の参院選である。
つけたしのようであるが、今暁行われたサッカー・ワールドカップ決勝戦、オランダとスペインの試合は延長戦の末、1-0でスペインが初優勝を飾った。場外で話題になったのは、8試合の勝敗予想を見事に当てたドイツの水族館の蛸と、煩い音のブブゼラだった。これでやっと熱気と嬌声から解放される。