今年5月政府は作成後30年経った文書を原則的に公開することとした。その第1弾として、昨日外務省は60年安保条約改定の交渉記録を主とする外交文書を公開した。
昨日公開された文書では、安保改定に当たり当時の岸信介首相は条約の適用範囲が、当初アメリカ政府が提示したのは「極東」ではなく、もっと広い「太平洋地域」だったことに強いショックを受けた。朝鮮半島や台湾で有事の場合に日本も戦争に巻き込まれる恐れがあると考え、何とか直接日本に影響が及ばない、より狭い地域をアメリカに提案したとされる。
何度か日米両国間でやりとりをした結果、漸くアメリカも日本の要望を受け入れ安保条約の適用範囲は「極東地域」と決められた。1959年の衆議院外交?委員会の質疑で、その極東の範囲に関する質疑が行われたことをまざまざと思い出す。質問者はその後横浜市長になった日本社会党・飛鳥田一雄氏で、答えたのは藤山愛一郎外務大臣だった。その時藤山外相はまだ極東の範囲について充分理解していなかったようで、答えがあやふやで飛鳥田氏の質問に翻弄され、掲示された大きな地図に示された極東の範囲が伸縮自在だったことを思い出す。今から思えば、その時はまだ範囲が確定していなかったわけである。
それにしてもアメリカの要求にひれ伏していた岸首相が、国家の安全上条約の範囲につき精一杯抵抗したことについて、あの強情者の岸首相にも1欠片の良心があったのかと意外な気がした。この文書公開は初めてだそうだから、これからも新しい文書が公開されると意外な事実が明らかにされるのではないかと思う。
いま東京・台場で開催されている「東京国際ブックフェア」は、電子書籍化元年を象徴して、関係者がどっと押し寄せているらしい。新しい端末機種が随分販売されていて、中国企業が大分日本市場を狙っているらしい。
その電子書籍化計画中の「知の現場」は、寺島実郎氏から書籍化承諾の連絡が入ったと連絡があった。これで取材した21人のうち、北康利氏の拒否を除く20人の方々から承諾いただいたことになり、8月の発行となる。自分の文章が電子書籍化され、多くの読者の目に書籍ではなく、端末で読んでもらえるというのはこそばゆいような気もするが、楽しみでもある。後は出版社でやってもらえるので8月の発行を楽しみに待ちたいと思う。