今日はいくつかのニュースにショックを受けた。まず、民俗学者で文化勲章受賞者の梅棹忠夫先生が亡くなられた。享年90歳だった。梅棹先生は私も34年間に亘って関わっているNPO法人「知的生産の技術研究会」(知研)の特別顧問にもなっていただいている。知研創立40周年の今年お亡くなりになったのも深い縁を感じる。直接お会いしたことはないが、そのご活躍ぶりには随分影響を受けた。特にわれわれの会に名前をいただいた名著「知的生産の技術」は135万部も販売され、長い間ベストセラーとなって多くの読者から愛読されていた。もちろん私にとっても愛読書のひとつであるが、もうひとつ梅棹先生の名を高めた労作は「文明の生態史観」だろう。象牙の塔に篭っている学者ではなく、中学時代から山岳部で登山に熱中し、動物の生態学を専攻しフィールドワークを中心とする梅棹学を確立した。今年になって先生の近著「山をたのしむ」(山と渓谷社発行、2940円)を買い求めたが、まだ読んでいない。近い内に読んでみようと思う。
八木会長、久恒理事長は何度かお会いしている筈なので、私以上にショックを受けているのではないだろうか。梅棹先生のご冥福を心よりお祈りしたい。
次のショックは申し込んだ書籍が届けられなかったことである。先月早稲田大大隈記念タワーで開かれた「60年安保闘争50周年記念写真展」で懐かしい写真を見たのだが、その折安保記念書籍の申込用紙が置かれていたので、買い求めるべく翌日郵便為替で送金した。ところが2週間経っても何も送ってこない。どこへ連絡すべきか悩んだが、インターネットで調べると準備委員会のHPを発見したので早速メールで抗議がてら問い合わせた。これに対してウンともスンとも言ってこない。すでに3週間無しのつぶてである。さすがに堪りかねて改めて今日強く抗議した。1時間も経たない内にすぐお詫びのメールが届いた。さすがに驚いたようだが、ノー天気にも発送が予定より遅れたというだけだ。改めて私宛に正式に詫び状を送り、書籍も出来 るだけ早く送るとの内容だった。まったく無責任にもほどがある。こんな仲間と一緒にあの安保を闘っていたのかと思うとがっかりである。
もうひとつのショックは些か次元が低い。NHKは名古屋場所の相撲中継の中止を決定して、テレビ中継開始以来57年にして初めてテレビ放送なしの本場所となった。やはり世間の強い批判を意識したせいだろう。国民が注目する名古屋場所となったが、このていたらくで果たして相撲協会は再生の可能性を示してくれるだろうか。
これはショックとは違うが、今日多摩美術大の市民講座は最終回となり終了証をいただいてきた。今日の講師は詩人で写真家でもある吉増剛造氏で、6年間同大で教鞭をとられ、その後サンパウロ大学の客員教授も務められた。ブラジルの専門家であり、夫人が日系ブラジル人である。面白いと思ったのは、ブラジルの荒野に見られる「蟻塚」に興味を持たれて、その生態について研究されていることである。1996年NHKのBSで放映された「わが心の旅」のブラジル訪問時のDVDでも「蟻塚」へのアプローチを紹介してくれていた。詩人となるとやはり、凡人とは異なるご性格のようで中々ユニークな発想をされている。講義は物珍しい話を聞けて愉快だった。