752.2009年6月4日(木) 天安門事件から早や20年

 かつては6月4日を飛行第六四戦隊(通称・加藤隼戦闘隊)にあやかって六四会の日として、毎年のように幹事だった西沢敏一さんと一緒に靖国神社へお参りしていたものだったが、その西沢さんが亡くなられてから、慰霊祭にも参加することがなくなって今日が六四会の日と結びつくことがなくなった。

 やはり、今日は天安門事件の日だ。20年前民主化を求めたデモ隊に対して軍が発砲した弾圧である。当時の江沢民・国家主席が1党独裁による共産党支配体制に傷がつくのを恐れてデモを武力で鎮圧したのだ。国家による人民虐殺である。中国政府は一連の運動を不満分子のテロ・動乱と位置づけ、総括処理しようとして、詳細を明らかにしようとしない。決して自分たちの対応が間違いとは言わない。民主化運動を弾圧したことを社会的「風波」と呼んでいる。国民の目を逸らそうともしている。

 世界中の注目を集めた中国人の民主化運動とその主役を担ったウアルカイシ氏ら学生リーダーたちのエネルギーは間違いなく中国政府の心胆を寒からしめた。今中国政府は徹底して事件を封殺して、新たな民主化運動が起きるのを極力警戒している。

 あれからもう20年の月日が経つ。当局側の発表した事件による死者は319名だが、実際にはその2倍を遥かに上回るといわれている。今でもその傷は深く残っている。中国政府は公に報道されることを極力避けようとしてあらゆる手段を講じている。20周年記念として呪わしい事件が意に沿わぬ形で報道されることを封じ込めようと必死である。実際今日NHK北京で中国国内向けに放映された、事件の映像が放送中に突然消えた。画面は真っ暗になった。中国当局が好ましくないとして画面を消したのだ。外国の放送に対する報道管制以外の何者でもない。まったく問答無用である。自由なし、言論なし、人権なしである。温家宝首相の言葉にも呆れる。国家は3権分立を求めないと言っている。これが果たして民主国家だろうか。アメリカ政府が天安門事件にからませて中国の民主化に注文をつけたところ、直ちに余計なことだといわんばかりにアメリカの認識不足と言い返した。中国は経済が順調に伸び、GDPも世界第2位のポジションが手の届くところに来て、経済力に自信を抱き、些か思い上がっている節がある。もう少し謙虚であってほしいと願う。

 この様子だとまだ中国の近代化、民主化は先だろうか。

2009年6月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

751.2009年6月3日(水) アンドロイドに乗り遅れるな!

 行方不明だったエール・フランス機が大西洋に墜落したことがブラジル空軍機によって確認された。機体は南米大陸のかなり沖合いに海深く沈んでいると想定されるので、遺体の収容はほとんど絶望的である。お気の毒というより言葉もない。原因はまだはっきりしないが、今のところ雷の直撃ではないかと推測されている。

 久しぶりに霞ヶ関で知研のセミナーが開かれた。講師は先日私自身サブ・インタビュアーを務めたIT専門家である久保田達也氏で、テーマはe -ラーニングである。現在サイバー大学教授としてもインターネットによる授業を行っているので、そのe -ラーニングの体験談を中心に現在のインターネットによる学び方を講義された。

 4月にお会いした時にも、バイタリティのある方だと思っていたが、身体で話す感じで実際に福岡で教えている授業のスタイルについて体験談を話された。実際には学生と対面しないPCを通しての講義なので、実態が中々想像しにくい。画面を通しての講義となると、息が抜けないようだ。授業の他に毎回レポートを提出させ、その添削をやるそうだから、その気苦労は大変だと思う。一応世界中に勤労学生がいるようで、外国人の方が優秀だし、男子より女子の方が優れていると言われた。

 印象に残っているのは、グーグルに関する情報である。実際にアメリカのグーグル本社へ行って見て驚いたという。それは、現在開発中の「アンドロイド」の発想も、今出版界に旋風を巻き起こしている著作権問題も同じグーグル社の哲学から生まれたものである。つまり、よい材料はフリーで提供しようとの発想である。なぜか? そうすれば国境がなくなり、戦争がなくなるという遠大な考え方に基づいている。講師もこの発想がすごいと言っておられたが、実際その通りで自分たちが世界平和のために事業を行うなどということは普通考えないと思う。

 まさに思想であり、哲学であり、発想の転換というべきであろう。私も何とか「アンドロイド」か、今流行しそうなi・Podにトライしてみようと考えている。久保田講師によれば、好奇心の強いインテリがこれに飛びつくそうだが、面白そうなので自分もあやかり、決断しようかなと考えている。

2009年6月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

750.2009年6月2日(火) 北朝鮮・金正日総書記の後継者が決まった?

 昨日GM社が連邦破産法を申請したことが新聞各紙やTVで大きく取り上げられている。再生の可能性もさることながら、それ以前にGMが順調に業績を伸ばした過程で大きなおごりがあったことが指摘されている。時代の要求を無視して経済的な小型車を作らなかったことが不振の原因とされている。結果的に他の外国メーカーとの競争に勝てないまま、ずるずる同じ販売政策の下に同じように車を生産してきたことが失敗である。1909年創立という伝統を破壊してしまったが、不安だらけな仕切り直しの船出となった。

 瀬戸際外交を続けて世界中から非難と顰蹙を買っている北朝鮮が、またミサイル打ち上げを計画しているらしい。しかも国内2箇所からである。一方、国連安保理は先日の地下核実験の国連決議違反に対して、遠からず北朝鮮への新たな重い制裁決議を行うだろう。北朝鮮が自身を追い込んだ四面楚歌だが、今日金正日総書記の後継者が決まったらしいとのニュースが流れた。かなり精度の高い情報のようだ。現在の金正日の後釜は、どうやら三男の金正恩(キム・ジョン・ウン)らしい。詳しい履歴が分からないが、まだ26歳の社会経験不足な若者のようで、政治的にも、外交的にも難しい立場の国家をリードしていく能力があるとはとても思えない。背後には軍部がついているとも噂されている。大体共産国家に世襲制度があること自体が理解出来ない。ミサイル打ち上げのアドバルーンもこの後継者決定を内外にPRせんがための祝砲といわれている。この一連のスケジュールを見ていると、自分たちの権威と立場を世界に印象づけるためだけにお祭をやっているように思える。えらい迷惑を蒙るのは、周辺諸国であり、圧制に我慢させられているのは北朝鮮国民である。いつになったら北朝鮮という国は目を覚ますのだろう。

 昨日から行方不明になっているエール・フランスがどこに消えたのか今もって分からない。リオからパリへ向かったまま影も形も消えてしまった。ミステリーじみている。228人が搭乗しているので、フランス、ブラジル両国が懸命に捜索しているようだが、まったく行方が分からないという。摩訶不思議な話である。

2009年6月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

749.2009年6月1日(月) 巨象GMついに倒産

 ついにGM社が連邦破産法11条を申請して倒産することになった。形式的にはアメリカ連邦政府が追加支援して再生を図る。従って再生の道は残されている。その追加支援額が3.8兆円だという。小さな国ならいくつか買収出来てしまうほどの巨額である。果たしてこれで思惑通り天下のGMが再生出来るかどうかは分からない。資本主義社会の企業経営というのは、自己責任であったはずである。それが倒産させるより国が手を貸して再生させる方が、国家経済のためには長期的にみれば得策であると判断したわけである。しかし、これだけの大金を1企業のために投資することは、資本主義経済の原則から逸脱している。経営者が安易に困ったら国に頼ると思われては困るのではないか。中国は共産党が支配した社会主義国家と言われているが、最早資本主義化している。他方でアメリカは資本主義の権化といわれながら、このような私企業へ国家財政をつぎ込むというのは社会主義的であると言わざるを得ない。今までのGMから事業を引き継ぐことになる新生GMが支援金を受け取ることになるが、ふっと昭和40年の山一證券救済時の日銀特融の折の所有株式振替伝票発行の手作業を思い出した。

 あれはまだ経理部に配属されてまもない経理でド素人のころに、破産した山一證券所有株式の処分について、上司から言われるままに振替伝票を切った。一旦倒産した当時の山一證券を旧山一證券として、名称をそのまま使い、日銀特融を受けて新たに発足した新山一證券を㈱山一とした。その後旧山一證券を清算して、㈱山一を山一證券に戻した。こんなトリックみたいなことをよく考えるものだと、当時は感心していたものだ。あれから44年が経った。

 スケールが違うとはいえ、今世界のGMが同じような手続きを踏んでいる。当分アメリカ経済も辛抱の時だろう。

 夜ゼミの仲間・池田博充くんと電話で話していたところ、彼が今日同じゼミ仲間の読売新聞の滝鼻卓雄くんとばったり会ったそうだ。滝鼻くんも今月で読売新聞東京本社・社長を辞めて、読売巨人軍のオーナーに専念するらしい。では、オーナー面していた「ナベツネ」こと渡辺恒雄会長はどうなるのかと聞いたら、渡辺氏は巨人軍では会長ではなく、一取締役に納まるということだった。ホット・ニュースである。

2009年6月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

748.2009年5月31日(日) 麻生首相もオバマ大統領も喫煙派だったとは!

 今日は世界禁煙デーというそうだ。市民団体「タバコ問題首都圏協議会」というのが、アンケート調査したところタバコを止めて欲しい著名人リストの1位に、落語家の立川志の輔が挙がった。木村拓哉が2位、麻生首相が4位のほかに11位にオバマ大統領がリストアップされていたのには少々驚いた。イメージとしてまったくそぐわないからだ。清潔感のある若手のリベラル政治家というイメージの強いオバマ大統領がタバコを好み、それが日本人の間で嫌われているとは思いも寄らなかった。アメリカでは喫煙率が年々下降して、今や公共の場は言うに及ばず、地域ぐるみで禁煙運動をやっている最中に、話題の大統領がスモーカーとは確かにイメージが悪い。日本人の、それもタバコ嫌いの日本人もよく観察しているものだと感心する。それにしても日米首脳が揃って喫煙するとは考えてもみなかった。ちょっとがっかりである。

 海外へ頻繁に出かけていた頃、それも30年前ごろから日本人と外国人の喫煙率の大きな差に愕然としたものである。アメリカでは公共の場ではまず禁煙が当然で、吸う場所を探すのに苦労したほどだった。特に、当時の文部省教員海外視察団とともに小中学校を訪問した際には、随分訪問校に気を遣ったものである。アメリカの教育関係者の間には喫煙者はまず見かけなかった。それに引き換え、日本の先生は一般の人より喫煙者が多かったように記憶している。アメリカの身障者教育の学校では、女校長先生にえらくお説教を食らったこともあった。アメリカ社会では押しなべてインテリ層はタバコを吸わないという空気だった。それだからこそ、新進気鋭のオバマ大統領が喫煙者であるということが余計理解出来ない。恐らく在任中に禁煙するのではないかと思っている。そうでもなければアメリカ社会の良識は彼を許さず、再選はないのではないか。

 今年横浜市では各種の開港150周年行事を行っているが、その一環として昨日横浜市市歌と市立横浜商高(Y校)校歌がY校野球部選手によって歌われた。何と市歌とY校校歌の作詞者が誰あろう、文豪森鴎外で、今から100年前に作詞されたものだそうである。鴎外が外国へ出かけたのが横浜港からだったという縁によるもので、市と市立学校のために詩を作ってくれたらしい。それにしても文豪が秘かに一商業学校のために校歌を作ってくれたとは打算が微塵もないことを感じて何とも微笑ましい。わが母校校歌もかの詩人・北原白秋が作詞してくれたが、やはり若い生徒のために打算なしに書いてくれたのだろう。その母校校歌の詩も素晴らしいが、昭和初期に作詞されただけに一部歌詞に時代の空気を感じる。歌詞2番の中にある「立身報国期せよ!友よ!」の文言は少々時代がかっていて歌うのに些か戸惑いを感じたものである。

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747.2009年5月30日(土) 気性の振幅が激しい韓国人の国民性

 盧武鉉・韓国前大統領の国民葬が昨日ソウル市内で営まれた。NHKは弔問者が500万人と大げさに伝えていたが、韓国の全人口が5千万人弱で、いかに追悼の気持ちが強くともそんなに大勢の人が集まるはずもない。案の定今朝の新聞では18万人と書かれていた。ソウル市内は哀悼ムード一色に染まったというが、盧武鉉氏はほんの1週間前までは「バカ大統領」とまで陰口を叩かれていた。大統領就任時までは清廉な印象が強く、弁護士という前職のせいもあり正義感に溢れたリベラルな政治家との期待も大きかった。しかし、あまりにも北朝鮮に対する太陽政策にのめり込み、その挙句経済発展は失速して、韓国国民の失望を買ってしまった。2期目の大統領には再選されず、かつてのトップとしては寂しい生活を送っていたが、そこへ妻子の収賄疑惑が表面化して一気に悪者へ悪名変身した。このころであろう。「バカ大統領」との罵声が飛び交うようになった。かつてインターネットであれよあれよという間に大統領にまで上り詰めた盧武鉉氏にとっては、内心大いなる屈辱であっただろう。

 それが、前大統領の自殺という前代未聞の事件になるや、あれほど非難や中傷を浴びていた盧武鉉氏が、悲劇のヒーローとして一身に同情を集めるようになった。盧武鉉氏が自殺したのは検察当局の強引な捜査のせいで、李明博現政権に責任があると非難するありさまである。これほど感情の起伏が激しく、ひとつの方向に流れやすい朝鮮民族だが、太陽政策の恩恵を蒙っていた北朝鮮の金正日総書記は、弔問にも訪れなかった。このような振幅の激しい韓国人の国民性について、ある韓国人カトリック神父は「韓国人は、どんなに批判していても、その人が死ねばともに悲しみ、許し、冥福を祈る。今国民は盧武鉉を身近に感じている」と分析していた。

 翻って日本人にも若干似た傾向があるが、これほど極端ではない。しかし、こういう性向は気をつけないと思いがけないところで政治的に利用され、気がついたら自分の意思とはかけ離れた方向に進んでいたということになりかねない。そうなってからでは遅いということを危惧するものだ。

 大東亜戦争前の世論の流れがそうだった。万が一にも大きな政治運動に利用されないよう祈る気持ちである。

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746.2009 年5月29日(金) 改造社の円本と岩波文庫創刊

 今まで気にも留めなかった岩波文庫本の最終頁に書かれた「読書子に寄す」を改めて読んでみた。「岩波文庫発刊に際して」と断って岩波書店創立者・岩波茂雄が昭和2年7月に書いたものだ。一説には「人生論ノート」の三木清が書いたとされる。小さな文字で頁一杯に書かれていて読みにくい文は、文庫創立者の心意気や文庫創設の趣旨を書いたものだとばかり思っていたが、そればかりでなく文庫発刊のきっかけとなった円本を大いに皮肉った、いわゆる円本へのアンチテーゼだったのだ。

 円本とは大正15年に改造社より発刊された、1巻1円全巻一括予約制の「現代日本文学全集」全37巻のことである。当時の1円が現在の価格でいくらに該当するかは判然としないが、1巻の重みから推定して3千円近いものだろう。だとすると全巻で10万円ほどを支払わないと手に入らない。岩波はこれを皮肉っているのだ。

 「~近時大量生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を繋縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその楊言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである~」と遠慮がない。そして、岩波は「このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした」と世に向かって岩波文庫の発刊を堂々宣言したのである。

 円本は洛陽の紙価を高めた。これによって文学愛好家は以前に比べて文学を読む機会がぐっと増えた。岩波はその先を読んでいたのである。2年後の昭和2年に岩波文庫が発刊されたが、爆発的なブームとなり、それは今も大きな市場を保っている。

 今日駒沢大学の講座で「本と出版の周辺」について柴野京子講師が新刊書の委託販売の解説の中で話してくれた。

 考古学ファンにとってまた新たな謎が浮かび上がった。国立歴史民俗博物館の調査によって奈良県桜井市の箸墓古墳がひょっとすると女王卑弥呼の墓ではないかと推測されている。箸墓から出土した土器が西暦240年~260年の「布留0式」と同じ時代のものと見られている。「魏志倭人伝」によれば卑弥呼の没年は時代的にも見合うという。これまで邪馬台国は北九州との説が有力であったが、今後これに一石を投じることになる。これで反って考古学ブームに改めて光が照らされるか。

2009年5月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

745.2009年5月28日(木) ついにGM社も経営破綻か?

 すったもんだしていたGM社経営者側と債権者間の債務削減交渉が決裂し、アメリカ最大の自動車会社破産の公算が強まった。債権者のほとんどから同意が得られなかったことがその原因である。政府支援を受け入れて引き続き再建計画を検討していたが、最後になってついに行き詰ってしまった。虚虚実実の駆け引きの末に経営側と組合が妥協するかに見えたが、その交渉内容は労働者に有利で、債権者にとっては見返りが少なく不利と判断され、デッドロックに乗り上げてしまった。経営者は期限までにまとめるほどの余地はなく、連邦破産法を申請して経営破たんする可能性が高まった。

 GMが行き詰まった3大原因は、①高待遇、②高燃費、③金融危機と言われているが、敢えて言えば、GMの従業員に対する高待遇が最後になって足を引っ張る原因になった。GMの高待遇は、他の企業に比べて抜群に良いとされている。工場従業員の中には親子代々GMに勤めるのが夢だと言っている労働者が多い。真面目に勤めると普通の企業従業員の給料の約2倍、アメリカ国内の日本企業の約1.5倍がもらえる。自動車産業が順調なら天国の生活を送れたはずだった。しかし、この従業員優遇が逆に会社再建の芽を摘むことになってしまった。

 クライスラー社がすでに破産宣告され、いままたアメリカ経済を引っ張ってきたトップ企業がいとも簡単に倒産の道へ向かうとはかつては考えられなかった。先日ドイツ証券副会長・武者陵司氏から伺ったアメリカの証券金融が形を変えて失敗したサンプルのひとつとも言えるのではないか。

 成績の優れない金融大手シティグループでは、日興コーディアル証券株式を三井住友FGへ売却したが、そのシティグループの経営執行委員会会長が株主総会で退任が報告された時、歓声が上がったそうである。その会長こそ誰あろう、クリントン政権の財務長官を務めたロバート・ルービン氏である。ルービン氏は10年間に亘りシティの拡大路線を引っ張ってサブ・プライム関連で9兆円近くの損失を計上する元凶となり、株主の大きな怒りを買った。

 日本はそれほどドラスチックではないが、北畑隆生・前経産相はアメリカ経済の仕組みと日本のそれとは根本的に違うと明言された。一方で現実派の武者氏は日本経済が今や地球帝国の一部であり、強い影響を受けると話されていた。どちらの見方が的を射ているかは分からないが、いやはや難しい問題である。

2009年5月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

744.2009年5月27日(水) 下町の3代目社長の企業経営と町おこし

 東京の下町で3代目社長として新しいタイプのTシャツを作り出している久米繊維の久米信行社長を取材した。久米社長の商品作りの狙いとキーワードは「着心地」と「エコ」のように思えた。インタビュアーは若手会員の蓑島和浩さんが上手に務めてくれた。久米氏は単なる世襲社長ではなく、3年前第2の創業と称して家業だったYシャツ製造業から、製造と販売を一貫してTシャツを売り出した。地域でも町おこしのリーダーとして率先して行動しておられる。同社はわが国では珍しく初めてTシャツを作った、国産Tシャツメーカーの草分けであり、商品作りと販売の仕掛けが独創的で独特のこだわりがある。中国製品のような安さには勝てないが、国内でオーガニック・コットン生産にこだわり、数量限定のコットンTシャツを製造している。また、プロモーションも四万十川口の砂浜でTシャツのアート展示会を企画したり、コットン生地のTシャツ製作のために有機綿栽培を行って、それをインターネットで告知して啓蒙活動を広げている。ポジティブに自分の思うところを試行し、上手く営業に結び付けているように感じた。

 本社には垢抜けしたショールームを併設して自社製品の展示を行っている。Tシャツが一番安いもので19,600円だった。インタビュー前にプロモーション・ビデオを見せてもらいながら、久米氏から会社経営の哲学を聞かせてもらった。話し方もにこやかでいて情熱的である。

 久米氏は敬虔な仏教徒のようで、それはブログ「縁尋奇妙」の言葉にも表れているし、尊敬する人物が僧侶ということからも分かる。ブログを通して外へ意見を発信したり、情報収集も得意なIT機器を駆使しながら、併せて多彩なPR企画を仕掛けている。メルマガを1千通送信しているそうだが、その中の何人かがそれを更に再送信してくれることを期待している。自分が影響を受けたものとして、NETだと明言された。

 「知の現場」としては、自分が仕事をしている会社を挙げた。そして、人々が訪ねるような場所だとも語られた。久米氏にとってそれは河原であり、畑なのである。挫折は大分味わったと言っていたが、大学で留年したことくらいしか浮かんでこなかったところから察すると、ドン底まで落ち込んだ経験はないのではないだろうか。つくづく幸せな人だと思う。

 まだ、45歳の若さで脂が乗り切っている今日に至るまで思うところをやってきて、新しいビジネス展開で成功し、ご自分なりの地域おこしも考えておられる。会社の経営も順調とお見受けしたが、中小企業が経営破たんに陥る今日の経済不況の中で、新しい発想で新しいビジネスを起こし、これを地域に還元し、それが巡り巡って自分たちのところへ還ってくると考える太っ腹は、会社経営のひとつの理想と見た。

 久米氏が偶々母校慶応・経済の後輩で、常盤訽子教授(父は日本共産党理論派のひとり、平野義太郎氏)のゼミ生だったとは意外だった。失礼な言い方だが、頼もしい後輩である。

 久米氏は夕食を兼ねた懇親会も設営してくれた。こだわりの蕎麦店「ほそ川」は江戸東京博物館近くの路地を入り込んだ下町風情の漂うお店である。蕎麦店にしては珍しい人参の天麩羅や、イチジクのデザートを美味しくいただいた。新しい企業タイプの経営者として益々発展されんことを祈りたい。

 作詞家の石本美由紀氏と作家・評論家の栗本薫(中島梓)氏が亡くなられた。

2009年5月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

743.2009年5月26日(火) 金融危機と観光振興の講演を聴く

 JAPAN NOW観光情報協会の本年度定期総会が日本プレスセンターで開かれた。決算報告では、財政的に数多くあるNPO法人の中でも珍しいくらい良い財務内容ではないかと思う。その原因は700万円以上の寄付金をいただいたことが寄与している。決算数字としては約900万円差益が生じた。この不況の時勢にあってめでたいことである。

 総会の後例年通り講演が行われた。昨年は渡辺喜美・行政改革大臣が当時の話題である役所の行政改革について、奥歯に物が挟まったような歯切れの悪いスピーチをされたが、今日は2人のスピーカーがタイムリーなテーマについて、濃い内容を立て板に水を流すが如く話された。

 最初に前経済産業省事務次官・北畑隆生氏が「世界同時不況は怖くない」と題して明快に話された。金融危機の現状と原因、日本の相対金融、日本の景気回復のシナリオ、日本経済の将来~人口減少下での成長戦略等について、資料を示しながら分かりやすく説明された。今回の金融危機については、アメリカの証券型金融が崩壊したのであり、日本の相対金融とは違うとはっきり論じた。従ってアメリカの金融危機と日本のそれとは根本的に違う。アメリカの経済は、GDPについて車、住宅、クレジットの3業種が打撃を受けたと説明されたが、その一方で農業、航空機、IT、医療等の分野で依然として世界トップの実績があり、その点から3業種が回復しても即アメリカ経済復活とはいかない。アメリカの救いは日本とは違い人口が増えていることである。来年半ばから回復へ向かうだろうとの結論だった。中国は来年の上海万博を成功させるとの国家目標があり、現状では成長率は鈍るとしてもアメリカ、ヨーロッパ、日本等の先進国がマイナス、或いは成長率鈍化の中である程度の成長率を維持出来るものと考えられている。

 中々頭のシャープな人で澱みのない話しぶりに、聴衆は感心していた。北畑氏については、3月に北康利氏にインタビューした際伺っていた。北畑氏は北氏の故郷・兵庫県三田市の出身で、北氏の母上の教え子である。北畑氏は現在日本生命に特別顧問として初めて天下っている期間だが、これは高校時代の友人・牧野力くんが通産次官の後に最初に天下った会社と同じである。多分最高位まで上り詰めた役人が最初に天下る指定席なんだろう。

 次いで登壇したのは、須田寛・JR東海相談役で都市の観光振興について持論を展開された。単に観光業界の論客として各地で講演されるばかりでなく、独自の観光論を持論としている。特に、これまで観光が地域振興等の経済的プラス面を取り上げられることがなく、「遊び」の観点から語られることが多かった。東京の観光、自分たちが住む都市の観光をもっと意識して、売り込もう、それが経済効果をもたらすと語って話を締めくくられた。

 終ってからパーティが開かれたが、2人の講師の話す内容が良かったので、中々充実した総会プログラムとなった。

2009年5月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com