中国の迫害を恐れて母国チベットを逃れ、インドの北部ダラムサラにチベット亡命政権を樹立したチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世が、一昨日後継者選びに関する声明を発表した。自分の死去後に自分の生まれ変わりを探して決める「輪廻転生」の制度に則るというものだった。「輪廻転生」とは、仏教用語だと信じていたが、現実にこの言葉をチベットで最高指導者自らが今まで通り実践しようということに納得させられた次第である。従ってラマ14世は自分の後継者が誰になるのか、生前には自分には分からないということになる。
ただ、ラマ14世をチベットから追放した形となった中国政府としては、ダライ・ラマの影響は極力避けたいために、輪廻転生による後継者は中国政府が承認する人物でなければならないとラマ14世の言葉に反発している。ラマ14世が即位したのは1940年で、14世がまだ幼かった4歳の時だった。こんな幼少児に指導者としての先導はとてもできるものではないと思うが、爾来14世は90年近くに亘りチベット仏教界の指導者、牽引者として崇められてきた。中国共産党軍がチベット自治区へ進駐したことによって、1959年チベット動乱が発生した際に、ラマ14世はチベットから脱出しインドへ逃れ、インド国内にチベット亡命政権を樹立した。その後ラマ14世は、チベット解放運動で非暴力を貫いたとして国際的に高く評価され、ノーベル平和賞を授与された。このノーベル平和賞受賞についても中国政府は、内政干渉と非難する有様で、中国とラマ14世、チベット亡命政府の間には、わだかまりは解けず、このままでは亡命政府はそのままインドに留まることになるだろう。ただ、ラマ14世は明日6日には90歳の誕生日を迎えるので、残りの人生もそう長くはない。中国政府が現在のチベット自治区や新疆ウィグル自治区、香港で行ってきた非民主的行動、高圧的な支配及び管理などを考えると、仮にラマ15世が誕生しても、チベット人のチベット人によるチベット人のための国造りは、見果てぬ夢になりかねない。
現在中国国内に住むチベット族は、6~7百万人と推定される。その内子どもの数は、約百万人とされ、彼らは中国が管理する寄宿学校で学習しているが、中国語による授業がほとんどで、チベット語による言語や文化を学ぶ機会は大分減っている。
2006年にチベットを訪れたことがあるが、その折チベット自治区の首都ラサの大昭寺境内で大勢の信心深いチベット人が五体投地という地面に臥してお祈りをしている姿を珍しく感じたものだ。ポタラ宮殿内の質素なラマ14世執務室などの見学を終えて、宮殿前広場へ出てくるとチベット人の五体投地の近くに、突然大勢の中国軍兵士が姿を現したのを知りびっくりしたことがある。何やら落ち着かない空気が流れていたが、その3か月後の07年3月にまたもやチベット動乱が勃発した。中国政府は、今後も引き続き、チベット民族の住むチベット自治区を強圧的に管理して一切統治、支配を手放そうとはしないだろう。ラマ14世の管理、指導するチベット自治政府が復活することは、難しくなったのではないかと残念に思っている。
さて、昨日の本ブログでアメリカ独立記念日に際してトランプ政権へ最後っ屁を放ってやったが、そのトランプ自慢の「一つの大きく美しい法案」に対して、下院で反対演説を9時間近くぶった民主党のジェフリーズ氏はこう言っていた。「一つの大きく醜悪な法案」だと。