参議院議員選挙が今日公示され、今月20日が投開票日と決まった。昨夕与野党8党の党首討論会が日本プレスセンターで開かれ、テレビで生中継された。残念ながら観ていなかったが、与党自民、公明党は物価高騰に際し、ひとり2万円の給付金を交付すると述べた。一方、野党6党の党首は、物価高対策として消費減税や、所得減税を訴えた。与党の2万円給付については、野党から選挙対策のための「バラマキ」と批判されている。しかし、われわれ安保世代が一番気になっていることが、今回どこの政党もアピールしなかった。それは防衛費の増額について、どの党からも何ひとつ反対の意見が出なかったことである。せめて共産党は党の公約として断固反対を主張すべきである。
そこで今年度の防衛予算は、国内総生産(GDP)の1.8%、8兆5千億円である。これを27年度までに2%に増額しようと考えているが、現状では実現しそうである。かつて1976年三木武夫内閣は防衛予算増額の要求に応じてGDPの1%以内を約束した。それが大した論議を重ねないまま徐々に増え、今では1.8%となった。以前にはGDP1%だった防衛費をほぼ2倍にまで膨れ上げてしまったことになる。ところが、現在アメリカは日本に対して日本の防衛費は少なすぎるとして極力3.5%に引き上げることを求めている。つい先日アメリカの要求によって29年度までにNATO各加盟国は5%を約束させられたばかりである。
防衛費のような国家予算の巨大な支出に対して、共産党、社民党を除きどの党からも強い反対の声が出て来ないのは、全国会議員が社会保障などより戦争のための備えをしていると受け取られても仕方がない。そして、戦後80年が経過してこの軍事費支出に不感症になった今の国民、特に若者たちは戦争についてどう考えているのだろうか心配でならない。臨場感で戦争の厳しさ、残酷さを知れば、戦争がいかに恐ろしいものであるかということが分かるのだが、如何にせむ戦争の臨場感は戦争の現場でなければ分からない。軍事費は増え、いつの間にか気が付いたら戦争が目の前にやって来るだろう。その時「怖い」、「何とかして」と言っても最早遅い。手遅れであることを覚悟しておく必要がある。防衛予算に関する論議が期待出来ない参院選挙は、はっきり言ってそれほど関心がなくなった。
さて、昨日テレビ報道でお粗末な事件を知った。静岡県伊東市の田久保真紀市長が市会議員2期の末、今年5月に行われた市長選で初当選したが、経歴に学歴詐称があったと市議会で追求され、伊東市議会では近日市長解任決議案を提出するそうである。政治家というのは、選挙民のためにひと肌も二肌も脱ぐ覚悟で真摯に政治にまい進しなければならないのに、褒められるような行動はあまり伝えられない。
伊東市長のケースは、学歴蘭に東洋大学卆と明記されていたが、いろいろ追求された挙句に、本意かどうか市長本人が大学へ出向いて卒業証明を求めたところ、大学から除籍処分なのでそれは出来ないと言われたようだ。これもまったくおかしな話である。どうも話に説得力がない。こんな姿勢ではとても市民の疑念を晴らすことは出来まい。卒業と言えば、卒業証書、或いは卒業証明書、また場合によっては卒業アルバム、指導教授の証明、などいくらでも卒業を証明する材料はあると思う。ところが、田久保市長にはいずれも証拠がないようだ。卒業式にも出なかったし、卒業写真の撮影の場にもいなかったと、あまり信用出来ない話ばかりである。テレビ・ニュースを観ていると市長は悪びれもせず、開き直らんばかりの姿勢だった。市議会各会派の代表は、地方自治法100条に基づく百条委員会の設置と、市長の辞職勧告決議案を議会に提出するようだ。それにしてもこの学歴詐称については、これまで市長が市議に立候補した当時の2度の市議選では問題にならなかったのだろうか。また支持者らはこのことをどこまで承知していたのだろうか。とは言え、随分レベルの低い地方自治の実情である。