世界中を恐怖に陥れていた過激派組織「IS」の最大拠点イラクのモスルが、イラク政府軍によって解放されたとイラクのアバディ首相が公表した。一時は怒涛の勢いでイラク、シリア、トルコのクルド人地域に攻め込み、暴力と破壊を繰り返してきたが、ついに国家組織としての「IS」はここに事実上崩壊した。まだ、シリアのラッカに多くの残党がいるが、盛り返す力は最早ない。
しかし、これによってテロの脅威が完全に消え去ったわけではない。個々にテロや自爆を実行する「IS」分子が生き残っているだろうし、彼らが自らの存在感の主張として個々にテロや自爆を仕掛ける可能性は充分あり得る。このところイラク軍の「IS」掃討作戦によって人間の盾とされていた住民の悲惨な光景を散々見せられているが、少なくともこのようなシーンが今後焙りだされないよう願うばかりである。
ただ、「一難去ってまた一難」で、イラク国内にはイスラム系宗教対立が燻っている。シーア派主導の政府によって屈辱を味わされているスンニ派国民の反政府感情に火を点けられるのが心配である。
さて、珍しいことだが、衆議院で閉会中であるにも拘わらず、今日閉会中審査が開かれ、疑惑だらけの加計学園獣医学部新設の経緯について前川喜平・前文科省事務次官を参考人として呼び、与野党衆院議員が質問を行った。ほんの一部だったが久しぶりにテレビ中継で衆院委員会を観ていた。6月の記者会見で前川氏がこの問題には初めから首相官邸の強い働きかけがあった、つまり初めに加計学園ありきと述べたが、今日も前川氏は同じ趣旨のことを述べた。これに対して疑惑の渦中にいる萩生田官房副長官や自民党質問者は、これを強く否定し、両者は最後まで対立したまま平行線だった。これでは、疑念は解消されない。
しかし、首相官邸サイドがいくら否定しようとも、首相周辺にはどこか怪し気で疑念が溜まっていることは分かる。文科省がほとんど知らぬ間に獣医学部開設日がすでに2018年4月と決まっていたこと、加計孝太郎・加計学園理事長が首相の長年の親友であること、萩生田氏が加計学園の教職にあったこと、等々疑問だらけである。
明日には安倍首相がG20から帰国される。世論調査によれば、安倍政権の支持率が大きく下落しているが、国民に数々の疑問と不審を印象づけた現状をこのままにして良いものだろうか。