ここ数日終盤国会で理性も品性もまったく感じられないあの騒ぎは、一体何だったのだろうか。そもそも森友学園と加計学園の怪しげなプロジェクトに安倍首相夫妻が深く関わっていたことから問題が発生し、何らかの圧力や配慮があったのではないかとの疑問が囁かれたのが事の発端である。とりわけ官邸スタッフと官僚による首相への忖度があったのではないかと疑念を持たれて、最後まで建設的な国会ではなく、低次元の国会に終わってしまった。森友学園問題では籠池森友学園理事長を証人喚問して安倍夫妻との関係を聞き出したにも拘らず、当事者でもある安倍夫妻は関与を頭から否定する有様だった。それで真っ当な結論が出されればまだしも、国民の行動を監視し締め付け、言論の自由を抑圧するテロ等準備罪法は成立させ、多くの疑問を残しながらウヤムヤのうちに国民の目を逸らそうとしている。
今朝の朝日新聞一面には、政府が「3ない」答弁に終始していたと厳しく指摘している。つまり何事も、仮に疑問があっても政府の答弁は「認めない」「調べない」「謝らない」と傲慢にも責任を取ろうとせず、悪いとも思っていないというのだ。そのうえで、都合が悪くなるとすべて官僚に責任をなすりつけると野党から非難されてもいる。
新聞もさじを投げたような論調が目立つ。1強に甘えて不遜な対応をした安倍首相は、最近益々それが嵩じて多少支持率は下がってきた。だが、自民党の1強多弱の支持基盤では、いくら野党が反対を唱えても数の力に押し切られてしまう。与党はその辺りはお見通しで、禁じ手を使って強引に採決に持ち込んだり、首を傾げることばかりで、実にわが物顔なのである。これでは日本の民主主義はいずれ崩壊してしまうだろう。
昨日の参議院本会議場におけるテロ等準備罪法案採決に当たっても、中間審議をカットしていきなり本会議で数の力によって採決した。かつて60年安保条約を強行採決した祖父岸信介首相と同じように、孫の安倍首相も尊敬する祖父を真似て強行採決した。これだからちやほやされた世間知らずの世襲政治家は困るのだ。悪いところだけ真似をする。反対する野党の牛歩戦術に対しては、参議院議長が時間制限を設けて最後の3人の投票を認めず締め切るという暴挙に出た。辛口の政治評論家・田原総一朗氏も烈火の如く怒っていたが、さもありなむと思う。言論の自由が危機に瀕している以上に、今や日本の民主主義は世紀末的になってきたと言わざるを得ない。