昨5月31日は、世界禁煙デーだった。今や世界的に禁煙ムードが広がりつつある。それほど地球上で、タバコは害あって益なしの困りものなのである。欧米では「インテリはタバコを吸わない」と言われている。実際途上国ほど街のあちこちでタバコを吸っている人を数多く見かける。
世界保健機構(WHO)は、喫煙による影響と健康被害について毎年数値を公表して警告を発している。信じられない数字であるが、喫煙による死者は世界で年間700万人に達するという。これまでは統計上600万人と公表されていたが、それが更に増えたうえ8割以上が途上国に集中し、それがこれらの国々における貧困を生む大きな原因にもなっていると厳しく警告している。
厚生労働省は喫煙が原因でその分余計にかかった無駄な支出まで試算している。喫煙者に掛かった医療費は、2014年度試算によると約1兆4,900億円で、国民医療費全体の4%近くを占めているというから黙っているわけにはいかない。加えて受動喫煙が原因とされる医療費が馬鹿にならない。医療専門家の話では、現在100万人以上が喫煙により、79万人以上が受動喫煙で、医者通いをして人並みの生活を送れない状態にあるという。
今厚労省はこうした現状を少しでも打破すべく、国際世論を受けて屋内の喫煙を禁止することを検討しているが、選挙の票田であるタバコ農家に配慮して、思い切った節煙対策に踏み切れない。塩崎恭久・厚労相が、世界の主要都市では屋内禁煙が当たり前だとして、大臣が先頭に立ち、屋内禁煙を日本国内で実施しようとしているが反対論が根強い。WHOからの要請や、2020年東京オリンピックを見据えたIOCの要請を受けて屋内では禁煙に踏み出そうとしているが、政府、自民党の一部がこの動きにプレーキをかけようとしている有様である。塩崎厚労相自身かつては喫煙者だったが、子どもが生まれたのを機にタバコを止めたという。「受動喫煙防止」は政治家の責務と考えている塩崎大臣の行動を評価し見守りたいと思う。
昔からタバコを止められないヘビー・スモーカーにとっては、禁煙は辛いことのようで、彼らなりに屁理屈をつけてはこそこそタバコを楽しんでいる。先日も小学校の同級生が、あるイタリア・レストランで店外ではなく、どうしても食事しながら吸いたいと店主を困らせたが、店主から他のお客が入店したら、店内での喫煙は止めるとの条件をいただいて目の前で吸い出した。そのうえ不遜にも喫煙者はタバコ税を払っているので、国に貢献しているのだと得意になって古臭い身勝手な自己主張を語り出した。そこでタバコは国にとって、国庫に入る税収より医療費などで失う金額の方が遥かに多いのだと言ってやった。彼は黙ってしまったが、今以って昔ながらの煙草性善説をぶつ現代人がいるのだから、厚労省にとっても悩ましいわけだ。
先日婚約を発表された秋篠宮家の長女眞子さまが、今日公務でブータン入りされた。そのブータンは、周囲を山々に囲まれた自然豊かな国であるが、2005年に世界で唯一の禁煙国家を宣言した。世界一幸せな国は、世界でただ一つの禁煙国家なのである。