先週に引き続いて、駒沢大学公開講座で「体験的ジャーナリズム論」担当の山田克講師の講義を拝聴した。
権力の監視者という視点で、メディアの立場とあり方を語られた。特に、メディアには何物にも縛られない在野精神が大事だと主張された。その点で共同通信社の大先輩である原寿雄氏に影響を受けたと話されたが、偶々2009年にその原氏が講師を務めた岩波市民セミナー4回シリーズを受講したことがある。
山田講師が強調された最近の問題は、安倍首相が読売新聞社との単独会見で憲法改正について持論を語ったが、それが読売1紙だけに掲載されたことであり、その内容も自民党内の憲法調査会が考えていたような腹案とは異なり、突然読売1社だけに機会を与え、9条1、2項に自衛隊を容認することを追加明記する点を主張したことである。これまで首相がメディアを1社だけに限定し、しかも国会で詳細は読売を読めと首相が言うようなことはなかった。首相がメディア各社に平等に機会を与えるのではなく、特定のメディアだけに優先的に情報を与えるのは、異常な対応であり首相の立場上いかがなものか。この辺りに最近首相周辺に問題が多発する原因があると思う。今に始まったことではないが、一強多弱により首相は思い上がっているのではないか。
今メディアの間では、今年の特ダネ賞の選考が進んでいるが、読売が本件を推薦する可能性について、話題になっているらしい。
私が山田講師に質問したのは、別の問題である。去る28日に北朝鮮が新型対空ミサイルを発射したとテレビ(NHK?)で放映しながら、その後このニュースについて、どこのテレビも新聞も一切報道しなかった情報の流し方についてであった。残念ながら山田講師もこのミサイル発射についてはご存知なかった。誤報なら尻拭いせず誤報と正直に報道すべきではないかというのが私の主張だが、講師が知らないのでは話が進まない。
そこで2008年1月7日に韓国ソウル郊外の利川市内で発生した冷凍倉庫爆発事件について話した。本件については当時日本テレビで散々放映していながら、翌日からどのテレビ局、新聞ともに一切報道することを止めた。如何にも恣意的である。40名も死亡し、その内12名が韓国系中国人だったせいもあり、当時の胡錦濤国家主席や、温家宝首相が韓国政府に処理と賠償を求めた事件だ。これほど各方面に深刻な影響を与えた大事件が、突然報道されなくなった。背後に意図的なものを感じる。
その年の11月に韓国東海岸の束草市で開催された韓中米日シンポジウム「退職後の高齢者の現状とこれからの生活」に、日本人唯一のパネリストとして招かれた時、その利川近くをバスで通過したが、同行してくれた通訳の桂明洙氏に尋ねたところ大変な事故だったと仰っていた。それが、日本国内では1月8日を境に事件の報道はまったくなくなったのである。あまりにも不自然である。何らかの事情で、報道管制が敷かれたのではないか。それが山田講師への質問である。情報隠蔽ではないかという質問である。
この事件は、岩波市民セミナーでも原講師にお尋ねしたが、生憎ご存じなかった。
言論の自由とともに、報道の自由がある筈であるが、事柄によってはどうも一部の情報は隠蔽されている恐れがある。このうえ共謀罪が成立したら、言論の自由まで権力者に奪われてしまうのではないか。考えるだにぞっとする。
ところで、利川冷凍倉庫爆発事件をネットで確認していたら、同項目に私の原講師に質問した日、2008年12月22日に書き込んだ私のブログがそっくり掲載されていた。