22日以降43時間に亘って続けられていた韓国と北朝鮮の南北高官会談が漸く合意に達した。両国とも当初の要求から考えればとても受け入れられる合意内容ではなかったが、ひとまず一触即発の危機は回避された。
北の地雷爆発による韓国軍兵士の負傷に対して、朴槿恵・韓国大統領は北側の謝罪と再発防止を強く要求した。同時にこれまで中止していた拡声器による大音響の北朝鮮向け宣伝放送を再開した。これに対して北は地雷事件は捏造であり、宣伝放送を停止するよう要求し、受け入れられなければ戦闘行動に突入するとの脅しをかけ、準戦時体制に入っていた。いつものことながら、双方ともメンツばかり剥きだしで退くに退けず、戦闘に火が点くことが心配された。しかし、最後の崖っぷちで双方とも歩み寄り、韓国が求めていた謝罪は北が「遺憾」の意を表明することで韓国が受け入れ何とか折り合いをつけた。韓国は宣伝放送を中止し、北は準戦時体制を緩和するということで、取り敢えず危機は避けられることになった。だが、南北ともに戦争は避けたいが、どうやって国民を納得させたうえで相手に得点を与えない解決策はないかと考えた末に出された結論が双方にとって玉虫色に見える今回の決着である。
それにしても同じ民族同士が、意地の張り合いから国際社会に紛争の火種を生じさせ、無駄な時間を費やし、何とバカバカしい猿芝居を演じているのだろうと思う。ともかく戦争騒ぎにならなくてホッとしている。
戦争とか、平和、安保法案についてふと考えていたが、昨晩テレビ朝日の「報道ステーション」で来日中のノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥンガ博士の考えについて紹介していた。特に安倍首相が力説している「積極的平和」外交と、博士が以前から唱えている同じ言葉の意味が、まったく反対に捉えられていることを簡単に解説していた。そして今朝の朝日新聞は「オピニオン」欄の約3分の2を割いてその違いを詳しく説明している。
博士が訴えていたのは、本来戦争のない状態は消極的平和に過ぎず、そのうえで貧困や差別といった構造的な暴力のない「積極的平和」を目指すべきだと提唱した。それに引き比べて安倍政権がアピールする「積極的平和主義」は、一国平和主義から脱却し、「防衛」と同盟国への支援の名の下に軍事同盟を結び、後方支援と言いながら外地へ自衛隊を派遣して戦争へ突き進んで行くという点で内容はまったく異なると言っている。この他にも博士は解釈変更で憲法第9条1項の精神が破壊され、日本外交はアメリカ一辺倒で政策が硬直していると厳しく指摘している。
安倍首相はテレビ画面で見ると最近精神的に酷く疲れているように感じられるが、肉体的にも「週刊文春」最新号が最近食事中に吐血したと暴露したように大分疲労を感じているように見える。国会答弁でも完璧な答弁が見られない。安保関連法案を成立させることだけに、全霊を注ぎ込んでいるように思えるが、果たして首相の願うようにうまくいくだろうか。