9月3日中国が北京で開く「抗日戦勝70周年記念式典」に、安倍首相は欠席を、朴槿恵・韓国大統領は出席を決めた。この式典を中国は「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」と位置づけて重視し、3日に天安門広場で行われる軍事パレードを国威発揚の場として利用し、併せて習近平指導部の国民、並びに軍内の求心力を高めようとの狙いがある。
反日派の朴韓国大統領がぎりぎりになって出席を決めたのは、そうせざるを得なかった事情がある。アメリカなど先進諸国の首脳らが欠席する中で、特にアメリカからは出席を辞退するよう遠まわしにアドバイスがあったにも拘わらず、これを敢えて振り切り、結局貿易、北朝鮮問題を考えて現在友好的な関係にある中国との関係を傷つけたくないという思惑の方が優先した。この式典には、国際社会で存在感を高めようとの中国の覇権主義的欲望とメンツもあり、できるだけ多くの国から首脳の出席を願って早くから外交筋へアプローチしていたようだ。だが、現状ではロシアのプーチン大統領以外に大物の出席がなく、韓国、南ア、モンゴル、カザフスタンほかの大統領が出席する程度で、この式典開催自体の意図と思惑に各国首脳の二の足を踏ませるものがあるようだ。
そもそも我々日本人は、8月14日にポツダム宣言の無条件降伏を受け入れ、天皇の玉音放送が流された翌8月15日を終戦記念日と考えているが、諸外国では必ずしも統一された見解があるわけではない。韓国は光復節、北朝鮮は解放記念日として8月15日を終戦と定めている他には、イギリスが日本の終戦を8月15日に決めているくらいで、アメリカや、ロシアを始め他の国々はほとんどが、ミズーリ戦艦上で降伏文書に調印した9月2日の翌3日を日本の終戦と認めている。だから、終戦記念日8月15日以後9月3日までの間に北方領土に上陸し占拠して乱暴狼藉を働いた当時のソ連の言い分が、今でもロシア国内で正当性を持って語られているわけである。
いずれにせよ戦後敗戦国日本を懲らしめるために考えられた中国のプロパガンダ工作によって、国際社会で反日親中のムードを煽りたて、そのうえ習体制への求心力を高めようとの宣伝に、安倍首相が出席する筈がないのは明らかであろう。戦争は70年前にすでに終わった。戦前の日本軍国主義の悪しき行状については、反省すべきは反省し、謝罪すべきは謝罪するのは当然としても、長きに亘って日本非難を単なる自国の宣伝のためだけに利用することだけは、好い加減に勘弁してもらいたいものである。