3637.2017年4月28日(金) 貴重な文献を廃棄処分する愚

 去る25日、北朝鮮の建軍節は何とか大事にならずにやり過ごしたが、アメリカのトランプ大統領は習近平・中国国家主席に北朝鮮への一段と強い影響力を発揮することを期待しつつも、外交努力によって緊張状態の北朝鮮問題を解決することは非常に難しいと述べた。あれほど強情な金正恩委員長がそう簡単には強気な方針を軟化させるとは考えられず、相変わらず朝鮮半島周辺には一触即発の緊張状態が続いている。

 ついては、国内では6年前の東日本大震災以来、昨年の熊本地震を始め近年各地に地震が頻発し、地震の備えについてメディアでも広く取り上げられている。

 昨日政府の地震調査委員会が、今後30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる分布図というものを公表した。これによると全般的に太平洋岸に地震発生が多いと予想されているが、その中でも最も発生予想率の高いのは、千葉市の85%、次いで横浜市と水戸市の81%である。東京は都庁所在地が47%である。実は、今秋築後37年が経過したわが家でも大地震に備えて耐震構造にすべく、リニューアル工事を始める予定である。それにしても最近大小の地震がしばしば起こる。耐震建築構造に手を加えて少しはのんびりと安心して暮らしたいというのか本音である。

 さて、大変残念な事実が分かった。仏文学者・桑原武夫氏の蔵書約1万冊が2年前に無断で廃棄されていたことが判明した。文化都市として知られる京都市が、名誉市民でもあった桑原先生の貴重な蔵書を、単に保管場所がないからと寄贈者であるご遺族に一言の相談もなく、すべて独断で廃棄処分してしまったとは、さぞや泉下の桑原先生も悲しんでおられることだろう。常識を逸っする呆れた蛮行である。桑原先生と言えば、元京都大学教授にして、京大人文科学研究所長として哲学者梅原猛氏、文化人類学者梅棹忠夫氏らを育てた人としても知られている。

 桑原武夫先生についてはこんなユーモラスな思い出がある。ベストセラー「知的生産の技術」の著者、梅棹忠夫先生とのご縁もあって、今から30年以上も前に「知的生産の技術研究会」セミナーで桑原先生が講演されたことがある。その時ひとりの男性が質問の中で、蛮勇を振り絞って電車に飛び込もうとしたと驚くような話をされたことについて、先生は私には電車に飛び込むほどの勇気なんかありませんとさらっと笑って応えられたことが強く印象に残っている。

 その桑原先生にとって、またご遺族にとっても大切にされていた価値ある貴重な蔵書を、京都市はなぜ邪魔もの扱いにして処分するような非常識な愚行をしてしまったのだろうか。京都市はご遺族に謝罪したようだが、失ってしまったものは取返しがつかない。こういう不祥事が起きた背景には、貴重な歴史的資料とか、古文書、ひいては文化全般に対する関心が薄いことが大きいと思っている。その意味では、現在の社会のムード、流れから考えて「なるべくしてなった」の感は否めない。京都市は当時の責任者を処分したようだが、せめて責任ある立場の人には、もう少し文学や文化について責任と良識を持って管理に当たり、2度とこんなヘマを犯さないよう留意してもらいたいものである。どうも後味が良くない話だ。

2017年4月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com