3276.2016年5月2日(月) 極東国際軍事裁判と昭和天皇

 GWの中休みと言うには、過激すぎる現象がある。今日日経平均株価が518円も急降下すると同時に、円高も106円台にまで進んだ。アメリカ国内で囁かれていた、根も葉もない根拠の日本の財政当局による円安誘導へお灸をすえる案もこれでひとまず一時停止となるだろうか。

 さて、明日は憲法記念日であるが、同時に戦後日本の大きな精神的な影となった極東国際軍事裁判が1946年に始まって70年目の1日でもある。2年半の長い時間をかけて審理を尽くし、48年11月に判決が言い渡された。今日に至るも専門家の間でも、一般の人々の間でも正当性や公平性に疑問、不満がくすぶっている。絞首刑となった7人のA級戦犯の人選にも疑問が残されたが、判事団のひとり、インドのパル判事は侵略の定義は困難として被告全員の無罪を主張したことが頭に残っている。今日の日本では、裁判の判決に異を唱える人の中では戦後世代が多いという。

 その中で今日最も禍根を残したのは、78年の彼らA級戦犯の靖国神社への合祀だろう。これが政治家の靖国参拝を巡って中韓両国からとかくの批判を浴びている。私自身も戦友会の方々と何度となく靖国神社へ参拝している。それは決してA級戦犯を慰霊するのではなく、戦友会のお仲間で戦没された方々への慰霊のつもりであった。A級戦犯のひとり、板垣征四郎陸軍大将の子息正氏は長年日本遺族会事務局長を務められていて遺骨収集事業で随分お世話になった。広田弘毅に因んだ広田通りも鵠沼の実家近くにあった。

 その他にやはり気がかりなのは昭和天皇の戦争責任論である。この問題には結論が出されていない。アメリカは戦後占領統治をやり易く実施するために天皇の戦争責任を追及することを恣意的に避けたが、これは公平に見て正しい選択だったのだろうか。アメリカの立場に立てば、彼らの深謀が窺える。それは広島・長崎への原爆投下についてアメリカに責任はないとするアメリカ世論を生み出すきっかけになり、言い訳のひとつにもなっていないだろうか。これが今もアメリカ現職大統領が広島と長崎を訪れない大きな理由となっている。結局納得できる結論を出さないとウヤムヤはいつまでも残り、後顧に憂いを残すということになる。

 微妙な問題を孕んでいて未だに在野には天皇有責任論には触れたがらないアンタッチャブルな風潮があるが、果たして本当にそれでよいのだろうか。国としてきちんと向き合っていないように思う。つまり日本人として天皇の戦争責任問題について明確な結論を出していない。戦時中の天皇の写真を見ると、どう見ても近寄りがたい絶大な権力を有し、飛びぬけた最上位の座から下命しているような様子が読み取れる。そして「天皇陛下万歳!」「天皇陛下のために命を投げ出す」などという国民の言葉は、最高権力者として君臨した天皇には責任がなく、天皇ご自身は知らなかったというような話にはならないと思う。

 極東裁判から70年も経ち、昭和天皇も世を去った今感情論とは切り離して、反省すべきは反省して正しい歴史認識と戦争責任というものを整理しておいた方が後世のためには良いと思っているが、どうだろう。

2016年5月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com