アメリカのトランプ政権が発足して2カ月余りが経つが、このところ強引なトランプ流儀が行き詰りつつある。意外なことに与党共和党内の保守強硬派と悉くぶつかり、思うように政策実現が出来なくなっている。その典型は、看板公約だった医療保険制度改革法(オバマケア)代替案を撤回せざるを得ない羽目に陥ったり、政府債務が増える大型税制改革を反対されたり、とかくこれまで強気一辺倒で臨んできたが、それも考え直さなければならなくなったことである。大きなアドバルーンを上げたメキシコ国境の壁建設も今年度予算への計上を断念した。
それとは対照的に外交面では少しずつ効果を上げつつある。実業界出身のティラーソン国務長官の交渉力の賜物であろうか、先日はロシアを訪問してプーチン大統領と仲睦まじい会談を行った。そして、NATO外相理事会に初めて出席し、国防費を国内総生産(GDP)の2%以上とするアメリカ政府の目標を各国に要請し、トランプ大統領が初めて出席する5月のNATO首脳会議で検討することを約束させた。
アメリカは以前からテロ対策のための費用がかかり過ぎるとして、NATO各国に対して、①国防費の拡大、②テロとの戦いでNATOの役割強化を要求している。すでに3年前に2024年までに国防費をGDP比で2%以上に引き上げることと、国防費のうち、20%以上を人件費以外の装備品の購入や研究開発に充てるとの約束が出来ていたが、アメリカ、イギリスなど5カ国以外はその約束を実行することが難しいと見られている。この間アメリカのテロ対策費などがヨーロッパやアラブで使われ、アメリカの負担が増えていることからストレスも大分高まっていることをNATO各国も理解している。
ところが、アメリカと友好関係を演出しようとしていたロシアで、このところ独裁者プーチン大統領への不満が燻っている。首都モスクワのみならず、国内各地で反汚職から反プーチンへの動きが加速している。一時は8割の支持を得て圧倒的なリーダーシップを発揮していたプーチン大統領が、お側役人首相メドベージェフ氏の贅沢な巨大資産に目をつけた青少年層から疑惑の目で見られ、その様子が動画で暴露され、それが親分プーチンへの疑惑となって思いがけない形でプーチン氏への不信と疑念が世間に晒されようとしている。
昨日の朴槿恵・前韓国大統領の逮捕など、どこでも脛に傷持つ独裁者にとってはうかうかしていられないようだ。