昨日ソウル市内の中央地裁へ出頭した朴槿恵・前大統領が、今朝未明収賄などの容疑で逮捕され、直ちに郊外の拘置所に移送された。韓国の大統領経験者11名のうち、朴槿恵氏が逮捕されたのは盧泰愚氏、全斗煥氏に次ぎ憲政史上3人目に当たり些か異常な感じがしている。この他にも金泳三・元大統領は自殺し、朴槿恵氏の父親である朴正煕・元大統領は暗殺されて哀れな末路を辿っている。あまりにもドラマチックで最高権力者、大統領の晩年としては些か異様に映る。
朴槿恵・前大統領はその点で就任前後には、韓国にとって初めての女性大統領として、また両親がいずれも暗殺された悲劇のヒロインであることも手伝い人気が高かった。特に父・朴正煕・元大統領がスピーチ中に射殺された光景を目の当たりにした不幸で可哀そうな女性であるとして、多くの国民の涙を誘った。しかも、その父親が軍人で強面だったにも拘わらず、歴代大統領の中では真面目で私利私欲がなかったことなどから最も国民の人気が高かった。それほど優位なバック・グラウンドがありながら、ことここに至って国民の大多数から掌を返すような仕打ちを受けたことは、本人の不徳もあるが、罪は罪として一部の韓国国民にとっても耐えがたいことだと思う。
朴槿恵氏が地裁へ向かう車列がサイレンを鳴らし猛スピードでソウル市内を走り抜けたシーンは、まるで映画を観ているようで何か普通ではない異様な光景に出会ったような気がした。
朴氏は今回13件の容疑で嫌疑がかけられたが、本人は悉くこれらを否定した。このことが反って証拠隠滅を図ると判断され、検察は直ちに逮捕に踏み切ったようだ。
それにしても、一国の大統領として最高位にまで上り詰めた人物が、その大統領職を全うすることなく終生国民から敬われることもなく栄光の道から弾き出され、天国から地獄へ突き落される一連のプロセスを見ていると、普通の感覚ではとても理解出来るようなドキュメントではない。この浮き沈みの激しいドラマチックな人生は、韓国人格別の激しい性向によるものではないだろうかと思ってしまう。一連のパフォーマンスばかりでなく、取り巻く周囲の人たちが狂乱的に正邪を主張し、犯した罪は一切許さずと喚き散らす激しい言動はあまり他の外国人の間では見られない現象ではないかと思う。
一昨年12月に漸く妥結した日韓合意にしても、新たな両国の外交関係が成立したと喜んだ直後から、それを受け入れようとしない大方の韓国国民の外交儀礼を重んじない主張には首を傾げたくなる。韓国には、法律以前に民心を忖度する風土があるようだ。況してや次期大統領選の立候補者がすべてこの日韓合意破棄、或いは再交渉を主張している国情では、外交交渉自体意味を為さないのではないだろうか。これからの日韓関係がどうなるのか心配である。
何事につけ隣国韓国の人たちと交渉するということと、物事を決めることは、つくづく難しいと覚悟せざるを得ない。