内外ともに騒がしい事象があってどうも気になる。国内では大きな話題は創業140年の大手企業・東芝の決算大赤字である。しかも、アメリカの東芝原子力子会社であるウェスチングハウス(WH)の日本流民事再生法の適用を連邦破産裁判所に申請して身軽になろうとの驚くようなドラマ付きである。東芝は今2017年3月期に、かつてリーマン・ショック後に日立製作所が計上した7,873億円を上回る、国内製造業としては過去最大の1兆百億円の連結最終赤字に陥る見通しとなった。つい最近までの予想では、最終赤字は3,900億円だったが、これを大きく下方修正し、遥かに上回る巨額損失を計上することになった。今3月期では債務超過に陥る。更に厳しい道は続く。このまま行くと8月には東証1部上場から2部へ移される。そのうえ下手をすると上場廃止になる可能性も否定出来ない。
あの天下の東芝が何ゆえかくも情けない醜態を曝け出すことになったのか。まさに崖っぷちである。高校同期生の中でも優秀な3人が東芝へ就職し、在職中はそれぞれ活躍していた。それが彼らにとっても思っても見なかったこのザマである。確かに原子力事業に首を突っ込み過ぎた失敗はあったが、それにしても経営才覚によってもう少し真っ当な会社経営が出来たのではないだろうか。これでは、格安旅行会社「てるみくらぶ」の失態を笑うわけにも行かない。世間をあまりにも軽く見ていたしっぺ返しだろう。
また国外では、2つの大きな決断が世界に影響を与えそうだ。
ひとつは、昨年40年以上に亘って加盟していたヨーロッパ連合(EU)から脱退を決めたイギリスのメイ首相が、昨日漸くEUに正式に離脱を通知したことである。EU加盟国がEUから離脱するのはこのイギリスが初めてである。離脱決定前にしきりに残留するようイギリスを説得していたEUとしては、心穏やかならず、トゥスクEU大統領はイギリスとの交渉ではEUの犠牲を最小限にすることが最優先と厳しい姿勢で臨む。交渉には難問が山積し、果たして予定の2年以内にすんなりと離脱条件がまとまるのか予断を許さない。
もうひとつの決断とは、オバマ前大統領が積極的にリードした地球温暖化対策を、トランプ大統領が全面的に見直す大統領令に署名したことである。アメリカの大きな政策転換になるため、その与える影響はアメリカ国内のみに留まらず、国際的枠組みの「パリ協定」が形骸化する恐れすら出て来た。パリ協定は、温暖化ガスの排出量を2025年までに05年比で26~28%削減することが目標だった。日本も排出ガス量ダントツ1位、2位の中国とアメリカが批准したことを受けて気が進まないまま、追い込まれて漸く条約を批准したばかりである。それを大統領令が、政府所有地での石炭採掘やシェールガス・オイルの採掘規制など火力発電所への二酸化炭素(CO2)排出規制の見直し指示を行えば、確かに国内エネルギー開発を促進し、雇用創出に貢献するだろうが、地球温暖化に逆に弾みをつけることは間違いない。そればかりか、せっかくパリ協定に加盟してともども地球温暖化対策に取り組んでいこうとする同盟国に失望感を与えることは避けられない。
トランプ大統領の主唱するアメリカ保護主義のひとり相撲により、地球温暖化を滞らせ、多くの国を戸惑わせるやり方は、とても世界の一等国として取るべき策ではないと思う。