2日間ドイツのバーデンバーデンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が昨日閉幕した。会議ではトランプ政権の「アメリカ・ファースト」の強硬姿勢のせいで自由貿易が揺らぐと懸念されていたが、結局のところアメリカの意向を無視するわけには行かなくなり、不承不承各国は「反保護主義」と地球温暖化対策の看板を下ろして、不本意な妥協線を打ち出さざるを得なくなった。
その前日アメリカを訪問したメルケル・ドイツ首相は、トランプ大統領との首脳会談前にまず大統領と握手しようと手を差し出そうとしたが、大統領には握手のそぶりは見せなかった。そのまま首脳会談に入り、難民問題ではメルケル氏が難民に生活再建の機会を与えるべきだと主張したのに対して、トランプ氏は国民の安全が最優先だと突き放した。元々礼儀を弁えない大統領だが、こんな対応ではまともな話し合いに入れない。そのうえG20はこれまで「反保護主義」をアピールしてきたが、アメリカの強い申し入れでそのアピールを取り下げ、代わりにトーンダウンして「自由で公正な貿易」との文言を盛り込むことになった。これまでもトランプ政権の言動には非礼な点が度々見られたが、ここでもその傲慢さと非礼ぶりを見せつけた。
自国の貿易赤字を一方的に相手国のせいにして非難するやり方はあまりにも我儘で不遜である。貿易赤字の相手国として、選挙戦中から強く非難していた中国、ドイツ、日本に対しては通貨安誘導を行っていると強く批判して、ここでも「通貨安競争を懸念する」との文言を入れるよう働きかけた。だが、流石に有力3カ国が強く反対したために我儘を引っ込めた。これからアメリカの財務、及び通商当局のスタッフが決まり次第、経済交渉の場でアメリカが具体的に圧力をかけて来るのは目に見えている。日本にとっては困ったトランプ政権である。
一昨日日本を訪れていたアメリカのティラーソン国務長官が、昨日中国を訪れ王毅外相と北朝鮮問題を中心に話し合った。北朝鮮の核・ミサイル開発により緊張が危険なレベルに達したので、中国に対してより一層北朝鮮に圧力をかけるよう協力を迫ったのだ。いくら警告しても守ろうとしない北朝鮮の対応にしびれを切らしたきらいがある。怖いのは、一方的にミサイルを打ち上げ、周辺国を恫喝するが如き北朝鮮の相も変らぬ言動である。オバマ政権の話し合い政策を止めるとまで言ったトランプ大統領が、このままでは暗に米軍が北朝鮮の軍事関連施設に対して先制攻撃を仕掛けることを匂わせるような軍事手段も排除しないと発言したことに対して、中国もアメリカを牽制した。しかし、今や何をやるか分からない北朝鮮に対して米軍が軍事行動を起こした場合、今月のミサイル打ち上げの際北朝鮮が標的は在日米軍だと明言したこともあり、北朝鮮が打ち上げる沖縄、及び他の日本国内の米軍基地へのミサイル攻撃が心配される。当然米軍基地のある日本が傷つくことは容易に想像がつく。
実際今日も北朝鮮は新しい大型エンジン燃焼実験を成功させたと発表した。日米韓は北朝鮮が近々弾道ミサイルを発射する可能性が高いとみて警戒を強めている。トランプ政権の過激な発言が北朝鮮を過度に刺激している一因でもある。トバッチリを食うことだけは、願い下げにしてもらいたいものである。