前橋地裁は昨日福島第一原発事故による国と東電の責任を認定して、それぞれの賠償責任を認めた。地裁は事故後に福島県から群馬県へ避難した住民らが国と東電に対して損害賠償を求めた集団訴訟判決で、それぞれが適切な安全対策を取らなかった点を違法とした。全国で福島第一原発事故関連の裁判は、18都道府県の20地裁・支部で29件が争われている。その中でこの前橋地裁の判決は初めてである。
裁判は地震の被害を防げなかったのは、国、東電がともにすでに2002年にM8クラスの地震発生が指摘されていたにも拘わらず、対策を講じなかったからであると過失を認定した。
判決の骨子を見てみると、概ね次の3点に要約されるようだ。①東電は2002年7月から数カ月後には津波を予見出来た。②非常用発電機の高台設置などが確保されていれば事故にはならなかった。③国は遅くとも2007年8月頃までに東電に安全対策を講じさせるべきだった。
結局地震と津波の襲来を軽く考えていたと判断された。地裁の判断は国も東電も津波を予見することは出来たというものである。
これによって62人の原告が東電から賠償金3,855万円を受け取ることになったが、年齢、避難経路、既支払い金との差額などを考慮すると1人当り7~350万円と大きな開きがあり、算定根拠は理解出来るにしても同じ原告の間でも不公平感が残るのではないかと思う。裁判に掛かった費用などを考えると原告によっては足が出て、金銭的には勝利を勝ち取ったといえるものではない。苦しみはこれからも長く続くことだろう。
福島第一原発の賠償費用や、廃炉もまだまだゴールが見えない。事故処理費が21.5兆円もかかり、国が補助するとは言え東電の暗闇が明けるまでは、これからまだ数十年単位の時間が必要になる。とても東電だけでこの復興計画を処理出来よう筈もなく、政府と一体となって再生計画を考えていかなければならない。
そのひとつとして、東電では会社を新しい体制の下に立て直そうとの検討がなされているらしい。その大きな目玉は東電が人事面でトップ交代を考えていることである。実はこの件については東電が決める前に経産省が動いているようだ。いずれはっきりするだろう。
現在東電では経営課題が慎重に検討されているが、それは、①21.5兆円の工面、②柏崎刈羽原発の再稼働、③送配電コスト引き下げ、④中部電力との事業統合、⑤電力小売りで他業種と連携、等々である。
我々被害者でない人間にとっては、原告らとともに原発を止め、節電や他のエネルギーへのシフトの方が原発現状維持よりよほど大事な問題である。政府・自民党はいくらトラブルや問題が起きても一向に懲りないようだし、民進党は簡単に原発ゼロ・ポリシーを取り下げようとしている。これでは、我々が生きている内に原発問題を根本的な解決に導く方策は見られないと思う。