3573.2017年2月23日(木) キリスタン弾圧の映画「沈黙」を観て

 昨日公開して1ヶ月が経ち何とかして観たいと念願していた遠藤周作著「沈黙」を原本にしたアメリカ映画「沈黙」を渋谷で観ることができた。今日が千秋楽なので何とか間に合って良かった。

 映画はキリスト教が邪教として禁じられていた17世紀江戸時代の筑後藩におけるキリスト教信者への弾圧と、お上が信者に棄教を迫る惨い受難を描いた中々の秀逸作品だと思う。スコセッシ監督自身この国際映画はずっと考えて来たことの延長線上にあると断言している。あの時代にキリスタンを苛めぬいたお上の苛め方があまりにも残酷に描写されているが、どこまで事実なのかは何とも言えない。どうしても分からなかったのは、踏み絵をして棄教した信徒が果たして本当に信者であることを止めたのかという点である。当時のキリスタンがこれほどまでの厳しい仕打ち、弾圧に耐え抜いてキリスト教を守り抜いたのは、奇跡にすら思えて来る。

 実は、先日原作を買い読んではいたが、まだ半分でちょっと残念な気がした。映画のストーリーは、原作と大きな隔たりはない。もっと早めに読んでおけば良かったが、こうと分かれば今更後半部分を読む気にはならない。

 それにしても久しぶりに素晴らしい作品に出合った。アメリカ人であるスコセッシ監督が、日本人の本性、それも中世の封建国家だった当時の日本の実情を汲み取り、それを日本的に掘り下げて日本人に、また世界に向かってキリスト教受難時代の事象を訴えたのは実に見事であると思う。

 映画鑑賞の後、4月にキューバについてセミナー講師を引き受けたので、主催者と代々木のすし店で簡単な打ち合わせを行ったが、この「沈黙」について議論が高まり、集まった5人がそれぞれ「沈黙」「キリスト教」「棄教」などについて自論を話し合った。1人は本も読んだし、映画も観たと言っていた。もう1人は千秋楽の今日映画を観ると言っていた。

 そして今日は、知人の元朝日新聞カメラマンの林荘佑さんからお誘いがあった、8年前と2年前に彼が訪れたキューバを撮った「キューバ写真展」へ出かけた。今朝林さんからメールでまだ来ないが今日が千秋楽だ、体調でも悪いのかとお尋ねがあった。午後になって天候が回復したので、銀座へ出かけた。

 展示写真の中で印象的だったひとつは、サンタクララの線路内にゴミが散らかっていたが、これ以外はどこにも街中にはゴミや塵が写されていないこととである。私も昨年訪れた時にはどこにもゴミがない清潔さに感心したものである。もうひとつは、2008年にアメリカ大使館の前に建てられた数多くのポールに黒い旗が翻っている写真に対して、2015年に撮られた写真では、ポールこそそのままであるが、黒い旗が撤去されていたことである。アメリカとの国交断絶時代と回復後の両国の外交関係を象徴的に示していたことである。

2017年2月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com