昨年ビルマ(ミャンマー)ではテイン・セイン前大統領の軍政に幕を降ろし、民政へ移管された。今朝の朝日新聞「オピニオン&フォーラム」にテイン・セイン氏へのインタビュー記事が掲載されている。
発展途上国の中でも経済発展が遅れて世界最貧国のひとつと揶揄されてきたが、今ではアジア最後のフロンティアと呼ばれ、外資の流入も多い。それに手を貸したのは日本である。わが国が対日債務の半分を免除し、その残りも日本の融資で返済出来るようにしてやったことが大きい。今では年7%の経済成長を達成し、1人当たりの所得も大きく伸びた。軍政時代には中国一辺倒だったが、いろいろトラブルがあり見直した。中国の電力会社がイラワジ川に建設していた大規模ダムが環境破壊と訴えられ凍結されたこともそのひとつである。
しかし、現在のビルマには課題が多い。民政移行したとは言え、国会は軍政時代のまま国会議員には軍人枠が残り、全国会議員の1/4は軍人から選ばれる。これでは軍政時代と何ら変わらず軍の意向が幅を利かせることになる。ロヒンギャなど少数民族への人権侵害問題なども解決されていない。テイン・セイン氏は、国会議員の軍人枠については、インドネシアの例を挙げて案外楽観視しているようだ。インドネシアの場合、1997年の経済危機以前には国会議員の議席は4割が軍人によって占められていたが、以降は徐々に軍人枠がなくなったことを自国にも期待しているようだ。だが、そう簡単に行くだろうか。したたかな軍部が今抱えている大きな権限をそう簡単に手放すとはとても思えない。
かつて23年間に亘って続けられた軍政時代の「負の遺産」はあまりにも大きい。道路などのインフラは取り残されたままで、民主化を訴えた大学生を弾圧し、大学も長期間閉鎖し、高等教育は崩壊してしまった。これからビルマはどうやって経済を発展させ、国家として独り立ちして行くのだろうか。ひたむきに前進して、世界のフロンティアと呼ばれるようになることを期待したい。
さて。昨日偶々神田神保町を歩いていて喫茶店「エリカ」という看板が目に入った。かつて飛行第64戦隊(加藤隼戦闘隊)の人たちとともに戦没者の慰霊のため度々ビルマを訪れたが、その最初の慰霊団団員の中にこの近くで同じ名前の喫茶店「エリカ」を経営しておられた陸軍士官学校55期生の會澤輝男さんと仰る方がおられた。アポなしでぶしつけに訪問したところ、その「エリカ」は會澤さんの弟が経営しておられ、亡くなられた兄とともに同じ名前の喫茶店を近くで経営していると聞いてびっくりした。もう大分ご高齢で帰りに「エリカ」の前を通ったら消灯していたので、昼間だけの開店のようだった。また、近いうちに慰霊団について書いた拙著を持って懐かしいお話を伺いに訪れたいと思っている。
それにしてもいつまで経ってもビルマは懐かしく心に残る国である。