キリスト教徒の受難について、このところアメリカ人マーティン・スコセッシ監督によって映画化された遠藤周作の「沈黙」が話題を集めている。昨日の日経紙朝刊「文化」欄でもスコセッシ氏自身や映画評論家、エール大ジェロ―教授らが「『沈黙』私はこう見る」としてコメントを採り上げていた。何とか原作を読んでみたいと新潮文庫版「沈黙」を買い求めたが、まだ読み出すまでに至っていない。映画も忙しくて残念ながら観ていない。
偶然だろうか、昨日大阪市内でキリシタン大名の高山右近が、ローマ法王庁からカトリック信仰の模範を示したとして「福者」の称号を与えられる列福式という式典が開かれた。キリシタンでもない私には、実感というものがあまり湧かないが、式に参加した信者の男性は、400年越しの夢がかなったと感慨深く語っておられた。この「福者」というのは、一般にもよく知られている「聖人」の前段階の呼称だそうだ。大河ドラマなどでも高山右近は、豊臣秀吉のバテレン追放令で国外へ追放された悲劇の人としてしばしば登場する。右近は1614年に徳川幕府の禁教令によって国外追放され、翌年マニラで病死した。
大分以前に五島列島を訪れた時、昔ながらのキリスト教会内部に立ち入り、ガイドさんから昔のクリスチャンの苦しみを伺ったが、当時も天草四郎の島原の乱を歴史上の事件のひとつとして覚えたことぐらいしか感じることはなかった。月末に淑徳大学公開講座で保岡講師からこの種の話を伺えることを期待したい。
さて、今日もメディアではアメリカのトランプ大統領に関するトピックスが目白押しである。現在注目されているのは、イスラム系7カ国からの入国者を制限する大統領令の妥当性を連邦控訴裁判所でどのような判断を下すかに絞られている。世論調査も実施したメディアによっては賛否が反対になってどこまで大統領が信頼されているのか俄かには判断し難い。
ところで昨日アメリカ商務省が2016年の貿易統計を発表した。アメリカが赤字となった貿易相手国をトランプ大統領は為替操作だと非難していたが、16年統計でもアメリカは貿易赤字だった。日本にとって不都合なことは、前年15年には赤字相手国として中国、ドイツに次ぎ3番手だったわが国が16年にはドイツを抜いて第2位になったことである。これで大統領は2日後に迫った安倍首相との日米首脳会談の場で、日本との貿易不均衡を厳しく突いて来ることだろう。
日本にとって幸いなことは、対米交渉とは関係なく財務省が発表した国際収支速報によると、経常収支は20兆円余りの黒字で貿易収支が黒字になったことが大きい。このところ気になっているのは、旅行収支が黒字になった年度以降の傾向である。16年も外国人旅行客の増加によりサービス収支が赤字の中にあっても旅行収支だけは過去最大の1兆3千億円も黒字だったことである。かつては、国から旅行業は貴重な外貨を無駄遣いしていると蔑まれたことに悔しさを覚えたことがある。今や昔日の感がする。