昨日のトランプ次期米大統領の記者会見の興奮冷めやらぬというところだろうか、新聞、テレビの話題はそれで持ち切りである。日本サイドには、トランプ氏の対応を好意的に見ている人はほとんどいない。政府でも菅官房長官は、まだ正式に大統領になっていない人なので具体的なコメントは差し控えると腰が引けているが、二階自民党幹事長などは米軍駐留費の分担や、貿易赤字の原因は当事者同士が充分話し合いの末に決められたルールに基づいて行われたものだと、不快感を示しトランプ氏の発言を諫めている。
フェーク・ニュースを流したとしてCNNに対するかたき討ちのような対応は、超大国の大統領になる人物としてはあまりにも常軌を逸していて見苦しい。いかに質問する記者が気に入らないからと言ってメディアを差別し、自分の思い通りに扱ってくれる報道を立てるようでは、報道管制となりかねず、言論の自由がどこかへ消え失せてしまう。そしてメディアが、常に大統領サイドの考えを国民に知らしめることだけに気を遣い、気が付いた時には、やや印象は異なるが高圧的なプーチンや習近平、金正雲のスタイルと同じになることを恐れる。
記者会見は総じて各メディアに評判が悪い。朝日にして然り、日経も厳しい。特に日経は世界中の人々の疑問はほとんど解消されなかったと言い、今朝の社説に「トランプ氏は疑問にきちんと答えよ」として、会見の中身は超大国の指導者としてはお粗末だったと手厳しい。
ロシアが握っている情報でトランプ・サイドが得たものの中には、以前トランプ氏が1泊196万円でモスクワの超デラックス・ホテルに宿泊した際、室内に仕掛けられた盗聴器に女性との怪しげな会話が録音されているとの話もある。質問した記者が断言はしなかったが、録音された情報が明かされれば、身の振り方を考えるかと聞かれて、そういうことは絶対にないと話題を変えてしまったが、その辺りがどうも臭い。
品もなく、ただ口汚く喚くだけの下品な大統領が、各国の常識的な首脳とトップ会談をスムーズにやって行けるのだろうか、些か疑問である。これからこんなパフォーマンスでアメリカの考えを押し付けられるとしたら堪ったものではない。
嫌な兆候はすでにいくつかの場面で現実となっている。そのひとつが、今日フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首がトランプ・タワー訪れたことである。トランプ氏と会ったかどうかは確認出来ないが、保守という以上に極右派のルペン氏とトランプ氏が接触し、お互いの信条に共感し意気投合しないことを祈るばかりである。