3527.2017年1月8日(日) 歴史的事件訂正と歴史的表現抹消

 この2、3年だと思うが、日本史上の大きな事象や事件が訂正されることが目立つようになった。歴史的な言葉や表現も改定されたり、抹消となることがある。抹消となった言葉の最たるものは、誰もが学校で学んだ「士農工商」である。江戸時代の階級制・身分制を表す言葉として、日本史で散々習ったものだ。だが、近年になって当時の武士はともかく、農工商の間には身分による差別はなかったので、反って「士農工商」という言葉は差別を容認する言葉として適当ではないと今ごろになって歴史家が身勝手なことを言い出し、「士農工商」は差別用語に組み入れられ、表立って使えなくなってしまった。そのため私は「士農工商○○○」というタイトルで現代社会に現実にある階級制度を批判的に書いた草稿を温めていたが、今になってどういうタイトルで書き直すか改めて検討しているところである。

 更にこれも10年前ごろから一部で言われていたという訂正である。私自身2年ぐらい前に初めて知って驚いた訂正事項である。衝撃を受けたのは、1192年開始とされていた鎌倉時代を1185年に訂正するという歴史年次の変更だった。これまでは源頼朝が征夷大将軍に任命された1192年を鎌倉時代の幕開けとしていたが、実質的に壇ノ浦で源氏が平家を破り、敵対勢力が消え、正式に朝廷から守護、地頭任命の権限を認められた1185年を、幕府開始の年と変更するようになったことである。年号を変更した方が日本史としては史実に近いと言えるのかも知れないが、受験勉強でバカの一つ覚えのように「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」と暗誦したことが、60年以上も経って「訂正します」と唐突に言われても釈然としない。

 そこへ今朝の朝日新聞「文化の扉」欄で、やはり鎌倉時代の2大事件の認識を変えさせられるような記事が掲載されていた。2つとも「元寇」に関することである。モンゴル襲来の神話的内容を現実的に変更させるような記事である。元寇と言えば、1274年の文永の役と1281年の弘安の役を指すが、いずれも教科書では神風が吹いて襲来した元軍が退却したと学んだ。ところが、記事によれば、神風ではなく風は吹いたようだが、実際には戦略の不備と食料不足により撤退したことが真相だそうだ。神風は都合よく歪曲されて太平洋戦争中に戦地で戦った旧日本軍兵士の神州不滅の国民意識形勢に大きな影響を与えたほどである。

 何だかよく分からない内に、苦労して覚えた史実をどんどん変えられたのでは、日本史も軽薄なものになってしまう。「神の国」を信じて戦い亡くなった元兵士たちは、黄泉の国でこれをどう思っているだろうか。

2017年1月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com