3521.2017年1月2日(月) イギリス人外交官による幕末外交史

 暮れの30日から新聞夕刊の配達がない。今日は朝刊も年賀状も来ない。テレビでは暮れからタレントによるエンタメ番組や、歌謡ショーが幅を利かせてあまり真剣味の溢れたニュースがない。スポーツでは、今日と明日関東大学対抗箱根駅伝と今日ラグビー大学選手権準決勝、暮れから高校ラグビー大会、高校サッカー大会が取り上げられているが、政治、経済、外交などはいまひとつ迫力が伝わって来ない。トルコで大きなテロ事件があっても1回限りの放送では忘れられてしまう。

 そんな中で元旦にひとつ興味深い番組があった。知り合いの‘The Japan Times’の川畑泰・元論説委員長から番組に出演するかも知れないと連絡をいただいた、NHK・BSの2時間番組「江戸城無血開城」である。幕末に英国公使館の日本語通訳として19歳で赴任したアーネスト・サトウが、幕府と薩摩藩の仲介役として江戸城を無血開城に導き、江戸を焼失から救ったことを史実に基づいたストーリーとしてドラマされたものである。日本史上サトウは日本語通訳として知られているが、実はそれ以上に外交官として実績を上げ、ある面で日本を救い日本の歴史を変えた人物であることを描写していた。川畑氏は番組の中でも登場してコメントされていたが、これまで寡聞にして知らなかったサトウの通訳としてだけでなく、本当の姿を知らされた。

 驚いたのは、通訳としても並外れた人物であったということである。「青い眼の志士」と自称していたサトウが編纂した三省堂の英和口語辞典には、日本人でもうっかりしがちな表現が満載されている。例えばfool=たわけ、ぬけさく、トンチキメとか、emergency=いざ鎌倉、cheap=安かろう悪かろう、のようにくだけた表現まである。こんな表現は、日本人社会に相当入り込んでないとマスターできないと思う。サトウは幕末に当時の‘The Japan Times’に度々投稿していた。彼は日本の真実の姿を海外へ紹介し、それは日本語で書かれた「策論」として今日に伝えられている。

 一例を挙げれば、「将軍を唯一の支配者とする陳腐な虚偽を捨て、日本は本当の支配者のもと、ひとつにならねばならない。日本は古より天皇の権威が強かった。その後源平によって天下は長く武家の時代となり徳川になる。つまり将軍は権限を天皇から委任されているにすぎない。真の日本のトップは天皇である」とはっきり述べている。

 江戸時代にひとりの外国人が日本に愛情を抱き、これだけ深く日本を知っていたのは驚愕すべきことである。観賞して中々味わいのあるドラマ仕立てのドキュメントだった。

 今年私は個人的にやってみたいと思っていることがある。いずれここに書き込みたいと考えている。昨年のキューバ旅行のように刺激的、かつ新鮮で心を洗われるような目的地はまだはっきり見当がついていないが、来年傘寿を迎えるので、それなりの国を訪れ、自らの過去の海外武者修行を併せ振り返って50年以上に亘る海外旅行体験をドキュメントとして整理してみたいと考えている。

2017年1月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com