3日前の本ブログで取り上げたように、朴槿恵・韓国大統領が、友人で実業家の崔順実氏へ流した国家機密流出事件が大きなスキャンダルになりつつある。今日当の崔氏がソウル中央地検に出頭して記者団の前で国民に謝罪の言葉を述べた。一昨日ソウル市内では朴大統領の辞職を求める2万人のデモ隊がシュプレヒコールを繰り返していた。大統領は10名のスタッフの内8名を更迭して国民に詫びたが、大統領の辞職を求める声は当分収まらないようだ。
さて、今夕の朝日、日経両紙とも1面に大きく今年の外国人訪日客が、昨日で2000万人になり年内には2400万人に達する見込みという記事を載せている。今や外国人旅行者を取り扱うインバウンド業が大きく国家財政に寄与している現状に、かつて国家のお金を無駄使いすると言っては外貨を消費する海外旅行業(アウトバウンド)を扱う海外旅行会社をクソミソのように貶していた旧運輸省(現観光庁)が、今では手のひらを返して外国人旅行者のお陰で国庫が潤っていると旅行会社を持ち上げるようなことを言うようになった。
手元にある日本旅行業協会(JATA)発行の古い資料「21世紀新たなるツーリズムの創造へ 2001年」とネットで数字を拾ってみると、1998年の海外旅行者は1580万人だったのに比べて、外国人訪日客は443万人にしか過ぎなかった。それが今年の海外旅行者数予測1700万人に対して、外国人訪日客は前記の通り2400万人に達すると見られ、完全に日本人海外旅行者と外国人訪日客が数において逆転した。
現役時代にアウトバウンドとインバウンドで集客に努めていたが、アウトバウンドに偏っていたせいか、旅行会社が低く見られていたことは、いつも頭の片隅にあり、悔しい思いを抱えたこともしばしばあった。しかし、今ではアウトバウンドを含めて旅行業界の地位が向上し、役所から軽視されることも少なくなったと思う。今日も菅義偉・官房長官が外国人訪日客の増加現象について嬉しそうに語っていたが、我々旅行会社の屈辱的な苦労がどれほど分かっているのか。耐えて努力した苦労が会社を辞めた今になって、その鬱憤を吐き出せるとは「遅かりし内蔵助」ではあるが、やれやれ漸く認めてもらえたかという思いである。恵まれなかった初期の海外旅行業界で苦労したことが、今では形こそ変わっているが、御国のために些かなりとも貢献することに繋がっていることで自らに納得させて、満足すべきだろうか。