先週銀座で大学のゼミ仲間と食事をしながらキューバについて話した折、池田くんから過日NHK・BSで放映された「世界のドキュメンタリー」のひとつ「カストロVSゲバラ」を観たかと問われ、残念ながら見損なったと応えたところ、嬉しいことに録画したのでコピーして送ってくれると言ってくれた。今日それが届いたので、早速観てみた。
タイトルを見た時まず不審に感じたのは、「VS」の表現だった。フランスの会社が制作したようだが、このVSという表現が理解できなかった。これでは、まるでカストロとゲバラがライバルとして対立、或いは戦いの相手のように誤解される。ビデオを鑑賞してみて、プロデューサーがカストロ・サイドに立っていることが分かった。これを描いた全体像は真実とは言えないと思う。確かに2人の間には、考え方や、意見の食い違いはあったが、それを乗り越えてカストロはゲバラを信頼してゲバラがゲリラ活動にのめり込むことを陰で支えていた。だが、ボリビアにゲバラが行ったのも、カストロの差金のようなことをビデオは述べていた。そんなことはあり得ない。私が心を打たれるのは、お互いに信頼し合いお互いを頼っていたことである。決して自分のために相手を利用するとか、駆け引きに使うなんてことはなかったと信じている。池田くんにはこんな感想を伝えたが、近いうちにもう1度ビデオを観てみようと思っている。
一方、アマゾンに注文していたゲバラの若かりし頃のDVDも今日届けられた。「モーターサイクル・ダイアリーズ」と題する、ゲバラが医学生だった当時生化学者だった先輩とともに中古オートバイでアルゼンチンからチリ、ペルー、ベネズエラまで南米大陸を北上した半年間に亘る約12,000㎞の旅を伝えるもので、ゲバラのゲリラへのめり込む原点はこの大旅行で見たり感じたことにあったと思える。
このDVDを通してゲバラの貧しい人々に対する親切心と思いやり、類稀なほど力強い行動力を感じ取ることができる。底辺の人々を助ける高邁な人格が、キューバ革命を成功させた大きな要因だったと信じることができる。とても誰にもできるような芸当ではない。改めてゲバラの人となりに尊敬の気持ちが湧いて来る。その意味でも、前記のドキュメンタリーは今ひとつ納得が行かない。
ところで、先月27日付ブログに「コロンビアで内戦終結」と書いた。ところが、コロンビア政府とコロンビア革命軍(FARC)の間で交わされた終戦のための合意文書が反故になりかねない事態になった。最終的に国民投票で賛否を決めると約束されて、昨日行われた国民投票の結果は、終戦に反対の意見が多数を占めそうな様相になってきた。99.98%の開票時点で合意内容に反対者は、50.21%、賛成者は49.78%となり、僅差で両当事者を始め、国連やキューバ、アメリカらが積極的に和平交渉に関与して来た終戦合意が覆されようとしている。
今日の朝日夕刊トップの見出しには「コロンビア和平 反対多数」と大きく出ている。折角積み上げてきた和平の努力が水泡に帰すことになるわけである。潘基文・国連事務総長は今年12月に任期を終了してその座を去るが、格好の置き土産だった筈のこの和平協定が成立しないと、事務総長の失望は大きいだろうし、自身鼎の軽重を問われることにもなりかねない。
例え、反対票が上回っても国民のほぼ半数が戦争を嫌っているわけでもあるし、今後はお互いに仕切り直しのうえきちんと交渉して揺るがぬ和平合意にまい進してもらいたいものである。