3419.2016年9月22日(木) 中国政府、チベット自治区へ監視強化

 懐かしいチベットの写真と記事を目にした。今朝の朝日新聞に掲載された、中国外務省が企画した海外メディア向けの取材ツアーに参加した朝日特派員のレポートである。私がチベットを訪れたのは、2007年12月だった。その前年1年間にチベットを訪れた観光客は約250万人だった。それが昨年2015年には2100万人が訪れたという。2020年には3500万人が訪れると些か楽観的過ぎる計画を立てているようだ。いくら魅力的な土地だとしても相当綿密に成算し、充分な受け入れ施設を準備し、魅力などを前広にPRするなどして計画を立てなければ、仮に観光客が大勢やって来ても対応できず、取らぬ狸に終わるのではないかと思う。それをいとも簡単に可能だと言い切るところに現代中国の成長と過剰な自信を窺える。

 チベット最大の観光地で、私のホームページ・トップの写真に掲げた世界遺産ポタラ宮殿から首都ラサ市内を見下ろした時に感じた感動と絶景が、いつまでこのまま保って行けるだろうかと、訪れた時に感じた不安が一部現実となったような気がしている。標高3650mの市内周囲にはそれほど高い建物がなく、見晴らしが良かった。しかし、中国の経済成長に連れて、いずれ市内に高層ビルが建築されてこのラサ市内も都市化、高層ビル化されるのではないかと要らぬ心配をしたものである。それが観光客の増加でホテル需要が増えたのは分かるとしても、外観写真を見る限り最近郊外に開業したインターコンチネンタル・ホテルなんか、あまりにもその突飛な近代的デザインの外装は不似合で、周囲の環境に溶け込んでいないように思える。今後どんどん近代的ホテルが建設されるに連れ、ラサ市内の都市景観がチベットらしい良さや自然の魅力をぶち壊すのではないかと心配で仕方がない。

 もうひとつ気がかりな点は、2008年3月に勃発したチベット騒擾事件以来、中国当局の監視が厳しくなり、チベット自治区内にはチベット族住民より漢民族の流入により、漢民族が支配するようになったことである。実際騒乱事件の起きた中心・ジョカン寺前広場をラマ僧とパトロール中の武装警察隊が隣り合わせに歩いている写真が載っていた。

 記事の大中小見出しはこうである。「チベット 繁栄とその陰」「08年騒乱後 観光開発急進」「漢族流入 高級ホテル続々」「現地民族 宗教抑圧に反感」「抗議の焼身自殺」等々、ざっとこんな感じの記事で情景が身に浮かんで中々興味深く感じると同時に、やはりチベットのチベットらしさが消えつつあるのが、何とも残念である。

 チベット騒擾事件では、その直前私がポタラ宮殿にいた時、本来そこにいる必要がないと思っていた軍隊が、不意に多数の装甲車でやってきて宮殿内に駐車し始めた異様な光景に驚き、何かあると予感した。そこに留まる理由がない軍隊が唐突に居座ったからである。そして、ラサで騒擾事件が起きたのは、正にその3ヶ月後だった。その時現場で異様な光景を目にして臨場感でおかしいなと感じれば、意外なことが起きる可能性があると確信するようになった。事件以来中国政府はチベットで神経質なほど厳戒体制を敷いているようだ。

 チベットの自然のままの美しさと素朴なチベット族が、中国政府の過剰な監視と干渉により、本来の良さが失われることを心から心配している。

2016年9月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com