昨日の日経夕刊に「中国『秘境の旅』潜む危険」なる記事が掲載されていた。当初山深い奥地への旅のことではないかと思っていたら、副題に「高齢者らが高山病発症」と書かれていたので、ひょっとするとチベットを取り上げているのかも知れないと興味を持って目を通した。現地日本大使館の報告によれば、最近チベットを中心に高山病などで亡くなる日本人中高年旅行者が急増しているらしい。
去年5月から10月までの僅か半年間に高山病などで死亡した日本人は、8人もいたというから驚いた。そのうち6人が60歳以上で、最高齢者は88歳だったというから怖い。やはり先日乗車した青藏鉄道が話題の中心になっている。この鉄道でチベットへ行く旅行者が増え続けている。チベット自治区は日本大使館に対して、旅行者が日程にもっと余裕を持つようにアドバイスしている。チベット旅行は基本的に高地旅行であり、高齢者の衰弱した肉体問題という以前に高山対策をないがしろにせず、予備知識を持たせることを求めているのだ。
実際、先に参加したツアーでは毎日標高3,600m以上の土地を旅行したので、旅行会社では一人ひとりに毎日酸素缶1本とミネラルウォーター2本を配布して、それなりに旅行者に気を配っている。それでも19人の参加者のうち、6人が医者にかかったし、その中で5人が点滴を受けていた。添乗員に聞くと、今までのツアーでも参加者の約三分の一が医者にかかっていたというから、やはり普通のツアーとは大分違う。旅行会社としても、旅行者の健康問題を考慮すると、これまでのように健康管理は旅行者自身で気をつけるというだけでは済まないように思う。
私自身体調を崩すということはなかったが、2つの点で今更ながら高地にいるということを再認識させられた。ひとつは、持参した血圧計で毎日計測していたが、血圧は若干高めという程度で特に問題になることはなかった。しかし、驚いたことに脈拍数が平常値の2倍に上がった。普段60前後の脈拍数が120近くにまで上がったのである。もうひとつは、外へ露出している肌の荒れ方が尋常ではなかったことだ。毎日ハンドクリームを塗っていたが、両手10本の指先がすべてひび割れ、あかぎれ状態になった。こんなことは今までなかった。いずれの異常な状態もチベットから北京へ到着した途端元へ戻った。滞在中は、酒と熱い湯は慎むように言われたが、賢明だったかも知れない。
この計測した数値をグラフにして旅行会社に参考資料として提供して、今後のツアー手配と管理に役立ててもらいたいと思っている。それにしても、68~75歳の賢明な知人はツアーにお誘いした時、行ってみたいが高山病が気になるので遠慮したいと言った。もし、参加していれば健康を害したかも知れず、止めた理由が納得出来る。