オリンピックに続いてリオで開かれていた第15回夏季パラリンピックが、12日間のスケジュールを終えて昨日閉会式を迎えた。中々洒落た趣向を凝らした身障者によるショーが演じられ、観戦者に感銘を与え、強烈な印象を与えたと思う。そして毎度大きな大会の都度言われる日本の獲得メダル数は全部で24個だった。だが、金メダルが1つもなかったことが些か寂しく残念な気がした。こんな珍事は初めてである。結局世界の障害者スポーツのレベルが上がったというのが、最大の原因のようである。だが、今大会は強豪国ロシアが国際パラリンピック委員会(IPC)から大会への出場を認められず、その点では日本もこれまで以上に有利ではないかと考えられていたが、どっこいそうは行かなかった。
結果的に日本のメダル獲得数は24個で、159参加国・地域のうちで第64位だった。これほどとは意外だった。その中でメダル獲得数第1位の中国は、実に金107個、銀81個、銅51個で合せて239個のメダルを獲得した。中国はパラリンピックに国家を挙げて力を入れ、成績優秀者にはボーナス支給のインセンチブを与えているようだ。予想外の成績を挙げたのは2位イギリスの147個に次ぐ第3位の117個を獲得したウクライナである。ウクライナは日本の半分以下の人口4,500万人であるが、この優秀な結果を出せたことにただ驚嘆するばかりである。次回開催国の日本としては、あと4年間をそうのんびりしているわけにも行かず、やはりそれなりの対応策を考える必要があると関係者は認識しているようだ。
複雑なのは、障害者スポーツの発展は歓迎されるべきであるが、日本では障害者スポーツに関する理念とは、これまですべての障害者がスポーツを享受できることだった。予算も獲得し、施設も整備されるに従い、これから理念とともに障害者スポーツの強化に取り組み、どうやって結果を出していくのか対策を考えて行かなければならない。理念を追うことと良い結果を生むことを両立させることは「二兎を追う者は一兎をも得ず」になりかねない。それにしてもNHKの生中継を通してかなり競技を見られるようになったが、これまであまりこの種のスポーツをテレビで中継することはなかった。しかし、リオ大会では2020東京大会を睨んでか、これまでとは大分様変わりして、多くの競技をメディアで目にするようになった。これから地味な理念と強化の4年間が始まる。
さて、昨年日経新聞がイギリスの‘The Economist’紙と提携して以来、度々同紙の記事が定期的に日経紙に掲載されるが、今朝の記事にフィリピンのドゥテルテ大統領のやや下品で、不可思議な言動を取り上げている。それは「『ドゥテルテのフィリピン』どこへ」というタイトルで、何を考え、何をしようとしているのか判別不能な大統領の言動を不安視して、いずれフィリピンは強権的で何を考えているのか判然としないドゥテルテ大統領の下で、国は弱体化し友好国の信頼を失うのではないかと密かに懸念している。
大統領は、過去20年間に亘って人口150万人のミンダナオ島・ダバオ市長を続け、裁判を経ることなく凶悪犯を処刑して確かにダバオ市内の治安対策に限れば、成功したと言えるのかも知れない。しかしながら、国家のトップとして国全体を見なければならない立場上、その常識外れの言動はいかがなものだろうか。その些か乱暴な行動が人権問題ではないかと先進諸国から非難される一方で、国の最高権力者として外交、内政ともにまったく経験がない点が不安視されている。実際最近驚くような非礼な言動があった。これまで良好だった対米関係に支障を来しそうなオバマ大統領を愚弄するような無礼な対応や、南シナ海の米比共同艦船巡回を中止するとの一方的な恫喝的声明の傍ら、中国と揉めている領有権問題で中国が国際仲裁裁判所の下した司法判決を無視したことが、自国フィリピンにとって不利であるにも拘わらず、中国政府の横暴さを追及せず、逆にお土産を要求する卑屈な態度に、‘The Economist’紙も呆れて不安を隠し切れない。どうしてこんな非常識な人物が大統領にまでなることができるのだろうか。国家を脆弱させ、劣化させるだけではないだろうか。
この不埒な大統領の言動が、これからいつ日本に及んで来るか心配である。