去る9月11日、15回目を迎えたニューヨーク同時多発テロ事件追悼式典に出席していた、民主党大統領候補ヒラリー・クリントン氏は急に健康の具合が悪くなり、式の途中で退場したが、車に乗り込む際よろめいてもいた。これまで演説の際にも時折激しい咳をしていたが、2012年に脳内の血管に血栓ができて、長期入院生活を余儀なくされたことがある。どうも日頃から健康状態は必ずしも良好ではないらしい。それでも担当医師は、軽度の肺炎を患っていたが、血圧や心拍数は平常で健康状態は良いと語り、15日から選挙のための遊説を再開した。
クリントン氏の健康不安に対して、俄然張り切り出したのが、誰あろう対立候補のドナルド・トランプ氏である。テレビ出演の際には健康証明書のようなものまで見せて自らの健康状態を強くアピールした。大統領職は当然ながら健康でなければ務まらないが、自分自身は30歳台の健康体でクリントン氏に比べて我こそが大統領に適していると、これまでとは別の角度からも存在感を強調し出した。
更にこれまでオバマ大統領はアメリカ生まれでなく、大統領資格がないとまで言及して一部には人種差別ではないかと非難されていた。それを今日になって渋々訂正し、オバマ氏のアメリカ国籍を認めた。トランプ氏は自分にとって不利だと分かれば嫌々ながら訂正し、有利とみれば追い詰めていくこれまでのご都合主義のやり方は相変わらずである。
クリントン氏の健康不安説が伝えられてから、これまで少しずつトランプ氏を8%差と引き離しつつあったクリントン氏の支持率が、再び1.7%差とトランプ氏に追いつかれるようになった。やはり健康は大統領選では大きな争点のファクターになる。実際世界を股にかけて東奔西走するには、健康は最大の武器であり条件である。今68歳のクリントン氏はまだ年齢的には高齢を憂うるほどではないが、やはり健康に不安があるなら、選挙民は投票する際に足踏みするであろう。
それにしても今このように健康問題が取り沙汰されるようになる前に、日頃からクリントン氏の健康状態をチェックしてその状態を熟知している筈の民主党関係者や家族はどうしてタフな選挙戦、そして4年間のハードワークを考えて、激職を選択するようになったのだろうか。厳しい言い方かも知れないが、少々軽率で支持者に対して無責任だったような気がする。仮に大統領になって途中で辞めざるを得ない結果になった場合、どういう対応をしようとするのだろうか。
世界が注目するアメリカ大統領選挙投票日は、今日から52日後の11月8日に迫っている。