イラクで戦ったアメリカ兵の戦死者が、ついに4,000人の大台に達した。開戦5年でこれだけの戦死者を出してしまった。1日に2.2人、5日で11人が命を落としたことになる。朝鮮戦争では戦死者34,000人、負傷者は10万人と云われた。泥沼戦争となって厭戦気分が横溢し、私も参加した反戦運動が激しくなったベトナム戦争では、戦死者46,000人、戦闘以外で亡くなった兵士が1万人、負傷者は30万人を超えたと云われている。いまのところ数字的にはベトナム戦争ほどの戦死者を生んでいるわけではない。しかし、世界的に生活水準が向上し、平和志向になっている現代社会で、これだけ多くの若者が意味のない戦争で尊い生命を落とすことは、非人道的であり、罪悪ですらある。
実際アメリカ国内では、PTSD障害により多くのイラク帰還兵が社会復帰出来ずにホームレス化していることが、大きな社会問題となっている。
いま接戦を繰り広げているアメリカ大統領選挙運動でも、イラク戦争賛否は大きな論点となっている。共和党のマケイン候補はアメリカ兵のイラク駐留継続を主張しているが、民主党の二人の候補者、オバマ氏とクリントン氏はいずれもイラクからの早期撤退を明言している。誰が大統領になろうとも前途は険しいが、仮に米軍撤退となれば、別の面で新たな混乱を引き起こすことになろう。散々イラク国土を荒廃させ、イラク国民に犠牲を強いた現在のマリク・イラク傀儡政権からアメリカの影響力を取り除いたら、曲がりなりにも築かれていた支配体制は一気に崩壊し、イラクは一層混乱の極に達するのではないかと懸念する。アメリカにとって、自己都合によって他国へ土足で踏み込んでおいて、結果的に自国の兵士に犠牲者が生じたからといって、このまま勝手に身を引くわけにはいかないのではないか。退くも地獄、留まるも地獄というのがアメリカの立場であろう。いまやイラク国内の混乱の最大の原因は、アメリカによるイラク開戦それ自体にあるからである。
それに引き換えて日本の役人は気楽なものである。散々行政を手前勝手に操り、手抜きと欲で失敗してもまず責任はとらないまま見過ごされる。敵前逃亡すればよいからである。イラク国民と同じ苦渋を味わうのは、いつもわれわれ国民なのだ。