朝日夕刊に全面広告で映画「靖国YASUKUNI」が紹介されていた。昨日東京と大阪の映画館5館で予定されていた公開が中止された。案の定右翼の横ヤリや嫌がらせを恐れた興行主が、事前に難を避けたというところだろう。これには悪しき前例がある。実は、先日日教組大会を受け入れていたプリンスホテルが直前になって、やはり右翼の圧力を恐れて日教組に対して大会開催の返上を迫り、裁判所の決定にも背いて会場使用を断った。社会的な批判を受けるのは当然としても、映画館もプリンスホテルと同じ道を選んだということになる。結局「言論の自由」の封殺である。一番喜んでいるのは右翼だろう。これで脅せば話が通ると味をしめ、進歩的な催しに対して更に攻勢に出てくるのは間違いないだろう。危険な兆候である。
この映画を観ていないので何ともいえないが、新聞報道によれば、公開したところで右翼にとっても大して問題になるストーリーではないという声が多い。
そもそもこのように上映中止に至ったきっかけは、自民党稲田朋美代議士がこの映画に公的資金が助成されていることに疑問を呈して、国会議員向けに試写会が開かれたことがニュースとして騒がれたことにある。結局稲田代議士自身はこの映画自体は内容的に問題となるような映画ではなく、むしろこういう経過を辿って一般公開が中止になったことは心外であるようなコメントを出している。だが、この人は弁護士であるが、見識を疑いたくなる。本気でそう思うなら、問題をこじらせ損害を与えた人たちに対して、説明するなり謝罪するなりして火付け役としての責任を果たすべきではないか。今朝の朝日でもそう主張している。火をつけて大火災にしておきながらそのままトンズラするのでは、放火犯となんら変わらないではないか。このような世間の常識が分からないから、政治家はレベルが低いと揶揄もされ中傷もされるのだ。
夕刊紙上の評論家田原総一朗氏と撮影した映画監督・李纓氏の対談記事を読むと、普段幾分右寄りの田原氏ですら、良い映画だったと誉めそやし「靖国をこれほど執拗に描いた映像は見たことがありません。よくぞここまで撮ってくれた、と思います」とまで言わしめている。田原氏がそこまで言うのだから、それなりの議論を提供する映画だろう。左右両方の立場の人が観て喧々諤々の論議をすれば良い。広告だからお愛想も必要だろうが、それにしても門前払いのような一方的な中止というのは、卑怯なやり方だと思う。ゼミのお祝い会の件で電話した大日本印刷㈱常務の池田博充くんもえらく憤慨していた。
何とか上映されるのを待ち、ぜひとも観てみたいものである。