昨日名古屋高裁で歴史的な判断が下された。航空自衛隊がバグダットに多国籍軍を空輸することが、憲法第9条1項に違反するとの画期的な判決だった。いままで憲法に抵触していると裁判を起してもそのすべてが却下されている。中には土俵にも上げてもらえず、取り下げるケースもあった。同種の訴訟で違憲判断が示されたのは初めてである。この結果は大きい。これは裁判員制度が始まろうとしている矢先に、一般に難しいと考えられている裁判制度についても別の問題を提起してくれた。というのは今回の裁判でも角度を変えたり、内容の骨子に強弱のつけ方次第ではどちらにもとれる微妙な判決だったからだ。結論は原告敗訴である。だが、原告側は実質的な勝訴という。基本線では原告の主張が認められたということだろう。一方、被告は勝訴を勝ち取ったため、同じ理由で最高裁へは上告出来ない。他方原告は主張が認められたと受け止め控訴しないという。原告側と政府被告側の受け止め方はまったく対極にある。これだから裁判は難しい。こんなケースはほとんどないと思うが、これからスタートする裁判員制度の中で、果たして素人が論理的に考えて判断を下せるだろうか。いかに訓練を受けて研修を積んでも一朝一夕に判断を下せるような知識が身につくわけではない。裁判員制度の難しさと怖さを改めて考えた。
ともかく航空自衛隊の多国籍軍輸送は、憲法違反との断が下された。このことがよほど納得出来ないのか、政府首脳は引き続き輸送活動を継続する方針だそうだ。さらに、石破茂・防衛大臣に至っては、適法だと思うとまで語り、従来通り自衛隊の活動を続けるという。司法を尊重していない姿勢が余りにも露骨である。
民主国家の基本である、三権分立の意味や法律の遵守が国を代表するトップ政治家には分かっていないばかりか、法律破りを平気で広言している。これはひとつの犯罪ではないだろうか。罪人が国を支配する。日本も段々酷くなる。