相変わらず北京五輪聖火リレーに関する無粋な話題が後を絶たない。聖火は昨日マレーシア、今日はインドネシアを走っている。チベットに対する中国の非民主的統治に対してチベット人や、世界中の人権団体から反発の声が挙がり、それが今日の中国への非難の集大成となっている。それにも関わらず中国が、チベットは中国の一部でチベット問題は内政問題であるとか、タライ・ラマ14世がチベットの独立を煽っているとか同じ主張を繰り返しては、自国の一方的な立場を広言しているだけである。それが、北京五輪開催への懸念となり、聖火リレー反対・妨害の動きを招いている。
今朝の共同通信によれば、チベット自治区当局はラサ郊外のセラ寺の僧侶400人の身柄を拘束したという。3月14日の最初のデモ直前に反政府抗議デモを計画したことが拘束の理由だそうだが、チベット人民から敬愛されている僧侶を、しかもチベット仏教徒修行の場、セラ寺にいた僧侶を力づくで連行して、弾圧のイメージを与えたら中国政府の主張も信用されなくなり、中国にとっても不利なのではないか。先日も中国政府は今後チベット僧に対する愛国教育を徹底すると公表したが、お坊さんに教育を施すなんてこと自体、中国政府は思い上がってはいないだろうか。それに、僧侶に対して愛国教育をできるような人材が充分いるのだろうか。
昨年セラ寺を訪れた時、さほど多くの僧侶はいなかったが、信心深いチベット仏教徒がマニ棒を回しながらお念仏を唱えて、寺の周囲をぐるぐる歩いていた素朴な光景を思い出す。
フランスでは、スーパー・カルフールの不買運動にまで発展した中国人の反仏デモに対して手を焼いているようだ。中国政府もこのままでは国家の評判を落としかねないと認識したのか、メディアを通じてようやく国民に自制を求めるようになった。
日本では長野で聖火リレーが行われる今月26日には、出発地を辞退した善光寺が今回のデモ騒ぎで亡くなった住民の追悼法要を営むことを決めた。これに対して中国政府、或いは中国人は反発するだろうか。自分たちだけの都合だけを主張する中国ナショナリズムの勃興には、いささか興ざめであるし、自国のことしか念頭にない短絡的な狭窄志向を何とか冷却させる方法はないものか。