374.2008年5月22日(木) 朝鮮問題専門家の講義を聞く。

 多摩大公開講座は今日がちょうど半分の5回目で、朝鮮問題の専門家・金美徳講師が、「今、朝鮮半島をどう考えるか」と題して豊富な資料を駆使して解説された。金講師も三井物産戦略研究所の研究員である。朝鮮半島だけに留まらず、①北東アジア経済、②北朝鮮経済、③中韓ロ北の2国間経済、と3つのテーマに分けて経済問題に限定して順次話された。とにかく朝鮮半島だけに限らず、アジア、ユーラシア全般について詳しい方である。特に、数値ばかりでなく、実情に精通しているので、説得力がある。話されるポイントと資料についてパワーポイントを使って説明されたが、早口でどんどん進まれるのでメモをとるのも大変だ。

 面白かったのは、中北関係は貿易量が一番多く、相互信頼が強いように見えるが、本心はその逆だということである。実際地下鉱物資源のように重要な原材料が北から中国へ運ばれる一方で、中国から北へ入ってくるのは、すぐ壊れるサンダルのように貧弱なものばかりで、中国が断然得をしている。朝鮮戦争の中国人義勇兵の参戦でも、彼らは朝鮮のために戦ったと賞賛されているが、そうではなく、中国人義勇兵は自国のために戦ったと考えている。加えて、両国の間には、高句麗問題が横たわっていて、北の人々の中国人に対する心情的な感情は決して良くない。高句麗問題とは、2千年前朝鮮半島の北部は中国領土だったと、近年になって中国が言い出したことから両国間にしこりとなっている問題だ。

 もう1点関心を抱いたのは、北の羅津港の地勢的な重要性に各国が目をつけていて、すでに中韓ロが狙っている。今後の物流の拠点、及びルートとして、鉄道整備が計画、施工され、そのうち3つの鉄道が注目を浴びている。それら鉄道、①図們江鉄道、②東辺道鉄道、③巴新鉄道が将来の物流の動脈となるだろう。

 また、北には物資は何でもあるという。値の高いレストランでも、食事しているのはすべて北の住民だという。富裕層も増え、桁違いの格差社会であり、韓国の見方では、北朝鮮崩壊のシナリオが描かれている。背高のっぽのホテル、「柳京ホテル」についても話が及んだ。ピョンヤンで放置されたままだった、105階建てのホテルが、16年ぶりに建築工事を再開するという。偶々今日の朝日夕刊紙上に、当ホテルについて「最近訪朝した韓国人研究家が明らかにした」と書かれていたが、その研究家とはひょっとすると金講師ではないだろうか。

 こういう話が後から後から話される。実態に即した話だから、説得力は充分である。三井物産戦略研究所の研究員はどうしてこうも自信たっぷりの解説ができるのだろう、とまさに驚きである。政府系シンクタンクだって、学者ぶってばかりいないで、手に入れた情報をもっと広く世間に公開してほしいものだ。

 これまで自分もあまりにもアジア、特に北東アジアの実態について知らなさ過ぎた。その意味では、今日の講義は「目から鱗」である。

2008年5月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com