多摩大公開講座も6回目となり、今日は折り返して寺島実郎講師2度目の登板である。冒頭受講学生たちのあまりに煩い私語に対して、寺島講師自身が直接苦言を呈した。私も先週アンケート用紙に学生の私語についてクレームを書いたが、一般の聴講生は誰もそのように感じていた筈である。いまの若者は、黙って人の話を聞く訓練ができていない。おしゃべりしていないと落ち着かないようだ。いずれにせよ困ったものだ。
寺島氏の講義は相変わらず明快だ。特に、今日はIT革命について持論を展開された。90年代東西冷戦の終結とともに、アメリカが軍事技術を主導して各分野に活用するようになったのがそもそもIT革命の走りである。特に面白かったのは、コンビニ、カーナビ、携帯電話等々を通して、無意識のうちにつながっていると思っているが、それらによって逆に個人情報を掌握されているということに気がついていないということだった。また、インターネットが普及したり、バーコードが広く取り入れられるようになると、容易に情報を入手することが可能になるし、末端で知力を要しない仕事にたやすく就くことができる。中間管理職者は要らなくなる。つまり、誰がやっても同じ仕事に従事する人になるか、余人を以て代えがたい人になるかである。
一例として、ワーキング・プアを取り上げた。2007年の雇用者5,561万人中、非正規雇用者は1,732万人、年収200万円以下のワーキング・プアは1,302万人、自営業者で200万円以下の人を加えると、労働人口6,402万人のうち、200万円以下の収入で働く人の割合は34%で、2,204万人になる。これもIT革命の成せるところである。
さらに、ITの進化は、FT(Financial Technology)との結合をもたらした。金融システムの革新である。この結果ITの発展がサブ・プライム・ローンにも及んだと話された。随分考えさせられる話だった。
終わって、NPO「知的生産の技術研究会」久恒啓一理事長、八木哲郎会長、秋田英澪子事務局長、JALの小林尚衛さん、大分空港管制官・永留浩さん、新たに会員になった大学ゼミ後輩の遠藤靖子さんと聖蹟桜ヶ丘駅ビルで夕食をともにした。みんな向上心において引けを取らない仲間ばかりである。中々打ち解けた楽しい夕食会になった。
昨晩遅くネパールの制憲議会は、国の王制を廃止することを決定した。15日以内に王族は、現在住居としている王宮を立ち去らなければならないという。240年もの歴史を誇った国王一族が追放される。世界的に王族が君臨すること自体時代錯誤であるが、ネパールの王族にはスキャンダルが多すぎて、すっかり国民に愛想をつかされたようだ。クーデターのような国家を揺るがすような事態によって退位するのではなく、選挙で国民が選択したわけだから、甘んじて国民の判断を受けるより仕方あるまい。ここにも「奢れる平家は久しからず」が生きていた。