世界自然遺産に登録されているアレハンドロ・デ・フンボルト国立公園には、ホテルからほんの1時間もかからずに到着した。とにかく広い公園でグアンタナモ州の中でもかなりの面積を占める。この世界遺産の最大の売り物は、世界で最も美しいと言われるカタツムリ「トリニダー」と世界で一番小さいカエル「エレウテロ・・・イベリア」が生息していると言われていることで、公園のガイドで16年間もその道で研究している女性が公園まで案内し、その途中でバスを停めさせ、いずれも世界一の生き物を捕まえて見せてくれた。後者のカエルはほんの1㎝もない小さな動物で神秘的な点に感嘆したところである。その名の通り公園のネーミングはドイツ人生物学者フンボルト博士が惚れ込んで、ここで調査し、新種の生き物を探し、発見し、絶滅の危機から救おうとしていた地道な功績に因んだものだという。今ドイツが相当な費用を拠出してキューバの研究者とともに自然保護の見地と絶滅奇種の恐れのある生物の保護に力を入れている。ここキューバで嫌われているアメリカは、科学分野の領域であるにも拘らず、手をこまねいて指を銜えて黙って見ているしかない。
午後は長い移動のため車内弁当を済ませてビランへ向かい、革命の盟主・フィデル・カストロ前国家評議会議長と弟のラウロ・カストロ現国家評議会議長の生まれ育った実家で、今ではカストロ博物館と呼ばれている聖地を訪れた。父親がかなりの資産家であったために行き着く前のトウモロコシやサトウキビ畑はカストロ家の土地だったと聞いていたが、とにかく広大な敷地である。そこはカストロ家の固定資産ばかりでなく、周囲にはホテル、バー、郵便局、闘鶏場などもあり、緑の多い環境から豊かだったフィデル・カストロの幼児期が偲ばれる。
生家と言ってもカストロが葉巻の不始末から焼失し、その後現在のオリジナル風に再建されたようだ。カストロ青年は恵まれた家庭環境の中で、愛情深い両親や兄弟姉妹に囲まれて幸せな青年時代を送っていたことが想像できる。ハバナ大学で法学を学び弁護士になって何不自由なく、まったく不満が湧くような環境ではない生活を送りながら、世界中の度肝を抜くようなキューバ革命を成功させるまでひたすら革命闘争に拘り、自由で恵まれた生活を捨ててまでも初志貫徹を実行した強い精神力とひたむきな意思はどこから生まれたのだろうか。人格的にも卓越し、物欲に捉われることなく、多くの人々、就中貧しい人々や同志たちからも信頼された。それが世界史的にも稀なキューバ革命を最終的にやり遂げた原因だろう。
やはり今日のキューバでは、革命なしには何も語れない。革命が成功したキューバが艱難辛苦を乗り越えて国民のためにどんな国造りを成し遂げるのだろう。まだまだ道は遠いようだ。