409.2008年6月26日(木) アメリカ、ついに北朝鮮テロ支援国家指定解除

 今日多摩大学の公開講座で講師を務められたのは、前学長・中谷巌氏である。多摩大学長就任以前から一橋大学教授として、また経済学者としても著名な方である。受付で日本文明の将来」と題したレジュメをいただいたが、専門の経済学とは直接関係のないテーマなので、どんな話をされるのか興味を持って登壇を待っていた。

 さすがに長年のキャリアがあり話すことに馴れておられ、パワーポイントを使用しながら、キリスト教を信じる西欧社会と柔軟な宗教観を持つ日本の差、戦後経済の復興を成し遂げた日本の力、日本人の能力に対する最近の自信喪失、日本の伝統を否定した明治維新と終戦、ギリシャ神話と日本神話の比較、等々に触れながら、西欧人と日本人の特性の違いについて分かりやすく説明された。その中で日本は伝統的に「権威」と「権力」が分離しているという話が面白く感銘を受けた。天皇家の権威と政治的権力が常に、分離していたことは世界の歴史上他に例がない。明治維新で天皇が軍部の統帥権を治めたことから、権威と権力が融合した。それが軍部の独走につながり、戦争へ走り日本を破滅させた。戦争の原因となった「権威」と「権力」の一体化は、本来日本的なビヘイビアではなかった。

 近年日本人は自らの能力や優秀性を忘れて、自虐的になっている。いつの間に日本人は歌を忘れたカナリア(漢字で「金糸雀」と書くらしい)になったのかというのが中谷先生の仰りたいことだと思う。

 さて、今日アメリカは北朝鮮のテロ支援国家指定解除を発表した。日本の拉致問題解決のためには明らかにマイナスである。日米同盟とか、日米友好と言っていても、アメリカには自国の利益追求のためには、実はしたたかな計算がある。拉致問題は6ヶ国協議の中では、異質な議題だった。韓国も日本以上の拉致被害者を抱えながら、日本との間には温度差がある。結局日本だけが核より拉致だけを優先して問題にしていたキライがある。北朝鮮の不誠実な対応もあって、6ヶ国協議は思うように進展しない。任期が残り少なくなって焦ったブッシュ大統領が、北朝鮮に譲歩してでも事態の打開を図ったのも、史上最低の大統領との汚名を残したくなかったからでもある。

 しかし、所詮日本とアメリカは6ヶ国協議に関する限り、同床異夢であることは間違いない。アメリカや他の4ヶ国にとっては、核問題が一番大切であり、日本とはミスマッチだった。日米同盟と言いながら、両国の考えや立場はまったく異なる。当然分かっていることだろうが、世論を気にし過ぎるからだろうか。自国の言い分や利益を主張できないのが、いつもながらわが日本である。中谷先生に自虐的だと言われそうだが、政治、外交、行政に関してはどうあろうと自虐的にならざるを得ない。

2008年6月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com