昨晩「報道ステーション」で、騒乱事件後初めてチベット・ラサ市内の画像を映し出した。中国政府が特別に許可を与え、治安の安定している今のチベットの状況を世界へ向けてPRしているのだ。実は、この中国の特別許可というのが曲者で、傍にはいつも中国人監視役が見張っている。自由に取材しているわけではない。ラサ市内にも自由な空気が見られなかった。随分お行儀の良い市内風景と雰囲気に見えた。それに市内各所で多数の武装警官が行進したり歩き回っていたり、こんな窮屈な市内のインタビューでは、取材相手から本音が出てくるわけはない。カメラマンに密着している監視役が陰であれこれ指図していることは論を俟たない。こういうヤラセ的取材方法は、現在の中国政府に特有であり、一種の報道管制である。中国は民主国家を目指しているが、昔の国家管理的な翼賛体制とあまり変わっていないのではないだろうか。
天安門事件の際、政府の行動に抗議した若者の正義感に溢れたエネルギーや動きは、世界中の喝采を浴びたが、今やまったくと言ってもいいくらい若者の正義の気概が見られない。完全に政府の思うままである。中国の若者は今や牙を抜かれ、飼いならされた子羊に成り下がってしまった。
今日駒沢大学講座の春季最後の講義があった。講師の講義内容は前回に続き、これまで取材に関わったオリンピックを主に、政治とオリンピックの関係について話された。その際、興味深い話を伺った。中国は1ヶ月後の北京オリンピック開催を前に、中国内TV放送は全番組を生放送から、10秒遅らせて放送することに決めたそうである。専門的なことはよく分らないが、中国にとって不都合なことが写ったり、放送された場合は、直後の10秒以内に修正するということだそうである。まさに中国の隠蔽、ヤラセの体質丸出しが見てとれる。まあそれにしてもよくやるなぁというのが実感である。
今日でサミットG8は閉幕した。昨日の会議の様子から、また各メディアの話から考えてもあまり大きな期待はできそうもないとみていたが、やはり期待外れだった。
もちろん議長福田首相は自画自賛して成功と言っている。多少自国の主張が通ったブッシュ・米大統領も機嫌よく議長国でもないのに勝手に記者会見を開いていた。排出国のシン・インド首相のごときは会議終了後、これまでのサミットに比べて大きな成果を上げたと福田首相をヨイショしておきながら、ブッシュ大統領と福田首相へ宛てて妥協のために署名したなどととんでもない文書を送っている。サルコジ仏大統領の如きは、どこの首脳とも会談せず、会議が終わるや午後一番でさっさと札幌を後にした。
そんなこんなで各国取材陣の評判もあまり芳しくないようだ。昨日G8が決めたのは、「排出量削減の世界全体の長期目標を含む長期的な協力行動のためのビジョンの共有を支持する」である。これを「(国連交渉で)長期目標を採択することが望ましいと信じる」と付け加えた。こんな文言をすんなり理解できると思っているのだろうか。あいまいな表現に屋上屋を重ねていて、真意を汲み取るにも時間がかかる。
来年イタリアで開かれるそうだが、こんな調子ではG8を開催してもあまり意味がない。