多摩大の寺島実郎監修リレー講座「現代世界解析講座」も、今日がいよいよ最終第12回となって寺島氏が3回目の講座で締めた。前回5月29日以来僅かな間にヨーロッパとアメリカ東海岸を歩いた感覚的な視点と、いつも通り14頁にわたる分厚い三井物産戦略研究所の数値資料を基に、明快な分析と説得力のある解説をされた。いつも新しい数値資料で説明されるので、分りやすくとにかく感心するばかりである。寺島氏の講義を聞くのは、今年に入ってから5回目だが、毎度目から鱗が落ちる話ばかりだ。
今日のポイントは、鈴木大拙師の「外は広く内は深い」の言葉から始まり、欧米を回ってアメリカが疲弊していることを強く感じたと言われた。「$」の価値が低下して、国によってはこれまで外貨準備高を「$」で持っていたが、より価値の高い「€」に切り替えることを検討している。
今日は世界的な食糧不足問題に触れ、日本の食糧自給率39%をどう考えるか、と問題提起をされた。
1981年にはわが国の第1次産業従事者は、全就業者の10%だったが、今では4%しかいない。食糧自給率を高めるために、一気に農業を復活させようとしても田畑は荒れて難しいし、農業人口は減り高齢者ばかりになっている。都市生活者が新たに農業を始めようとしても容易にはできない。最近農民にとって代わり、農業生産法人が活動して、食糧輸入は増加して6兆円もありながら、輸出も4千億円に増えた。農業のブランド品や果物が中国をはじめとして海外の富裕層に人気があるそうである。主力輸入品目の第4位に衣類があるが、これは衣類、バッグ、靴、貴金属等のぜいたく品だそうで、確かに一部には金あまり現象が見られる。
また、日本の政治改革や行政改革等の「改革」は小手先だけで、中選挙区制度を小選挙区制度に代えるだけだったり、役所を統合し省庁の数を減らすだけで、役人の数は減っていないような、名前だけの改革で、実際に政治改革をやるのなら、「議員数を減らす」とか、「議員在任期間の短縮(多選禁止)」のように実質的な変更を挙げられた。ごもっともである。
最後の講座になったが、やはりアカデミックな環境でじっくり授業を受けるということは、気持ちが洗われ、リフレッシュしたような気持ちである。12回のうち、一度だけ福島県の研修講師を務めたために欠席したが、改めて秋から始まる第2学期で新しい講師のもとに、斬新な講義を聞けることを楽しみにしている。