呆れかえった企業倫理である。燃費偽装問題でいま世間を騒がせている三菱自動車が、法律とは異なるデータ測定を1991年からやっていたことを明らかにした。何と四半世紀に亘って国と消費者を騙していたことになる。誤魔化していた専門的な惰行法とやらは良く分からないが、実際に車を走らせずに机上で算出していた事例も散見されたというから、「三菱欺瞞王国」である。同社は不祥事を重ねてはその対応に追われることを繰り返してきた。不祥事が起きると会社として世間に対し反省のポーズを取りはいるが、その実一向に反省していないのである。これが幼児的三菱財閥の世慣れた所業なのだろうか。あまりにも世間を舐めている。
昨日開かれた記者会見では、相川哲郎社長が謝罪の言葉を述べていたが、過去に会社存亡の危機に陥り、三菱重工や三菱商事など三菱グループの支援を受けて経営再建に当たり、前期は最高益を挙げるまでに回復した自信からだろうか、その態度には心なしかあまり反省の気持ちが窺えなかった。今朝の日経紙「私の履歴書」に福沢諭吉の曾孫である三菱地所名誉顧問・福沢武氏が、偶々相川社長の父相川賢太郎・三菱重工元会長についてエピソードを書いている。三菱重工が品川に自社ビルを買って丸の内の三菱村から出て行ったが、その時の交渉相手が父相川氏で、三菱地所が引き留めるのを振り切って丸の内から出て行ったという。父親は三菱マンらしからぬ手強さを秘めていたようだ。果たして子息の相川社長はどうか。このところ三菱重工、三菱商事の経営状態もあまり芳しくない。以前は苦境に立ち至り三菱グループから支援を受けた三菱自動車も今度ばかりはその支援を受けられない恐れがある。三菱自動車の相川社長は、大三菱という大きな組織にいながら、世襲社長と受け取られかねないポジションにあり、憶測するなら世間の風波にあまり晒されたことがない御仁ではないかと推測しては、失礼だろうか。